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2006年01月23日
陸奥部屋新富合宿 稽古レポ&インタビュー [ 格闘技 ]
朝青龍の偉業達成(7連覇、年間完全優勝、年間84勝)で終わった昨年の九州場所。直後の12月上旬、新富町で陸奥部屋の合宿が行われた。
陸奥部屋の師匠・陸奥親方は元大関の霧島。自分が10代の頃、いつもテレビで見ていた力士だった。陸奥部屋には3人の関取(十文字、豊桜、琉鵬)がいる。宮崎出身の取的(幕下以下の力士)も3人いる。
宮崎で大相撲の力士を、しかも力士と力士がぶつかる姿を見る機会というのはそうはない。絶好の機会だ。しかも、自分は大相撲ファン。行かないわけにはいかない。関西と首都圏で長く暮らしながら、大相撲は一度も行かなかったし…。
12月8日、陸奥部屋の合宿に足を運んだ。豊桜関へのインタビューはむちゃくちゃ緊張してしまった…。宮崎出身、平成生まれの2人にも話を聞くことができた。稽古レポートともにお送りしたい。
(文:照屋、撮影:黒田&照屋)
12月8日、朝。寒いっす…
12月8日の7時頃、始発電車でJR日向新富駅に降りた。新富町といえば航空自衛隊新田原基地のある町で、自分が来たのは航空祭を控えた数日前だった。
それにしても寒い寒い! 12月の寒さは厳しかった。自分は重ね着をして行ったけど、朝の冷たさは身に染みるもので「さみぃ~!」とばかり言っていた。あと、自分は始発に乗るため徹夜したので、眠くてたまらんかった…。
7時半ごろ、稽古場所となっているさくら南公園(るぴーモール商店街沿い)に到着した。静かな町にある、静かな公園。そこに「歓迎 陸奥部屋合宿御一行様」「十文字関」「豊櫻関」と書かれたのぼりが立っている。一角に大きなテントがあり、その下に土俵がある。そこで、力士たちが20名ほど稽古に取り組んでいた(稽古開始は7時)。土俵の他にてっぽう柱まである。向こう側に陸奥親方がドンと座っていて、その上に「陸奥部屋」と書かれた板が飾られている。こちら側はゴザやパイプ椅子、ストーブなどが置かれてあって、ここから稽古を眺めることができる。
力士たちはもちろん裸! まわしを着けているだけだ。こっちは重ね着しまくって、ストーブに当たりながら温まっているのに…。まずはこれに驚いた。凄いよ、力士は! 自分が着いたときは学校に行く前の小学生たちがいて、稽古を見学していた。
十文字、豊桜、琉鵬。新十両の猛虎浪も!
テントに置いてあったスケジュール表、かわら版(相撲豆知識がHYPER高砂部屋のと同じ)、参加者名簿を読んでみる。合宿には他の部屋からも参加していた。
【陸奥部屋】15名
十文字(東前頭8・青森・29歳)、豊桜(西前頭12・広島・31歳)、琉鵬(東十両8・沖縄・28歳)、霧の若(東幕下15・熊本・21歳)、白馬(西幕下24・モンゴル・21歳)、霧の海(東幕下40・青森・25歳)、霧錦(東三段目17・茨城・22歳)、山竜(東三段目47・東京・23歳)、霧桜(東三段目98・鹿児島・22歳)、霧美山(西序二段22・千葉・26歳)、土佐(東序二段54・熊本・24歳)、霧丸(西序二段110・愛知・20歳)、勇大(西序二段112・宮崎・16歳)、播谷(東序二段113・茨城・22歳)、岩永(東序ノ口28・宮崎・16歳)
【湊部屋】2名
仲の国(西幕下19・中国・22歳)、松原(西序二段61・青森・17歳)
【立浪部屋】3名
猛虎浪(西十両10・モンゴル・21歳)、豊丸(西幕下34・福岡・21歳)、立豊(西三段目4・愛知・22歳)
なんと、猛虎浪がいる! 次の初場所から新十両、関取だ。注目度は大きい。その力士がいるのだから、ビックリした。九州場所は幕下以下をほとんど見てなかったので、誰が猛虎浪かわかるまでに時間がかかったけど…。まわしが取的と同じものだった。他にも中国人では唯一の力士・仲の国、名前を覚えやすい豊丸(ゆたかまる)もいる。
陸奥部屋の注目はやはり関取3人。幕内で勝ち越した十文字、幕内復帰を決めた豊桜、再十両2場所目で勝ち越した琉鵬。取的は誰が誰だがまったくわからん…。宮崎出身の勇大、岩永は「この力士かなぁ…?」と思いながら見守り、はっきりわかったのは合宿所(公民館)に行ってからだった…。
合宿スケジュールは以下の通り。
【2日】合宿者到着
【3日】けいこ準備
【4日】けいこ(運動)、わんぱく相撲、親方たち到着
【5日】けいこ、保育所園児見学、取材打合せ、テレビ取材
【6日】けいこ、テレビ取材、激励会
【7日】けいこ、保育所園児見学、養護学校など3施設訪問
【8日】けいこ、保育所園児見学
【9日】けいこ
【10日】けいこ
【11日】けいこ、交流けいこ、もちつき大会・ファンサービス
【12日】けいこ(仕上げ)、保育所園児見学
【13日】後片付け
【14日】町長にお礼
地元との交流がけっこう多い。1日の流れは7~10時が稽古、11~12時が朝食、12~15時が昼寝、18~19時が夕食となっている。
稽古前半、取的同士の激しい取組
土俵の上ではぶつかり稽古をやっていた。はず(脇と胸のあたり)を押して、土俵の反対側まで相手を押していく。土俵の下では力士たちが四股をずっと踏んでいる。他はタイヤを引っ張ったり、バーベルを上げたり。早朝の静かな田舎町に「オリャー!」という声が響いていく。
関取のまわしは白の木綿(本場所の取組で使う締め込みは朱子織)、取的は黒の木綿だから誰が関取かはすぐわかる。でも、その関取が誰かわからないお客さんもいて、「あれは誰?」と聞かれることが多かった。力士を見て感じたことは、テーピングを付けている力士が多いなぁと。
8時をまわると、仕切りからの実戦的な稽古が始まった。稽古の激しさがグッと増す。髷もどんどん崩れていく。(力士のなかでは)身体の大きくない取的同士の一番でも、間近で見ると迫力がある。「やっぱ、生が一番面白いわ!」としみじみ思う。関取はまだ土俵に上がらない。陸奥親方はジッと見つめているけど、ときどき立ち上がって指導している。関取たちもアドバイスを送っている。取組を終えた取的は、関取に水を付けに行く。それにしても寒い! 自分は震えながらストーブから離れないようにしている…。
また、ぶつかり稽古が始まった。そして実戦的な取組。蛇の目に7人が立って、勝負がつくと名乗りを挙げていく。そして、勝者と名乗りが認められた者の一番。これが延々と続く。
大相撲グッズ売ってます
近くではホットコーヒーと大相撲グッズを販売していた。品物はカレンダー、歴代横綱灰皿、歴代横綱扇、ストラップ(千代大海・似顔絵・座布団)、十文字のぼり、決まり手湯呑、タオルなど。グッズ販売というのは本場所中や巡業中など、相撲協会が認めた場でしかされない。
稽古後半、関取も土俵に
自分が着いたときはお客さんは数人いるだけだったけど、9時をまわると20人を越えてきた。お爺さんが力士を見て「大きいね~」と言っている。保育園の園児たちもやって来た。
土俵も熱気が高まっている。やっと関取が土俵に上がった。琉鵬vs猛虎浪、十文字vs豊桜が目の前で実現していく。陸奥部屋の力士は投げない。ほとんど前に出る相撲だ。互いに押し合う。関取同士のド迫力の稽古に自分やまわりの人たちは見入るばかりだ。勇大など下の力士は関取のため、タオルを持って立っている。関取はここでも下のものにアドバイスを送っている。
最後は関取が取的に胸を貸すもの。「さあ、来い!」と関取が胸を突き出すと、取的が反対側まで押していく。これを何度も繰り返す。どんどんスピードが落ちていく。「早く!」と声がかかる。取的の息づかいが荒くなって、バテテくる。関取に投げられるとなかなか立てない。汗かいて、砂まみれになって、ボロボロになっていく。それでも続けさせる。ヘロヘロになって、やっと終わり。取的は関取に水をつけて「ありあした…」と言う。これが何人も続く。最後に関取が登場。やはり関取は押す力が違う! この日一番、関取と取的の違いを感じるシーンだった。〆はすり足。
稽古終了後
取的たちは整理運動。さすが力士、脚が見事に開いている。関取3人はいつの間にか多数訪れてた園児や擁護施設の人たちと記念撮影をしていた。ほんとに多くてビックリ。
すべてが終わったのは10時半ごろ。力士たちは宿舎(公民館)に戻って、お風呂に行ったり、チャンコを食べたり…となった。
豊桜関「なんじゃこら大福がいいですね」
さあ、力士インタビュー。豊桜関だ。昭和49年3月の広島生まれ、兄は北桜(北の湖部屋)。これまでの最高位は前頭5枚目。優勝争いに絡んだこともある。九州場所は十両に落ちたものの、1場所で幕内復帰を決めた。売りは突っ張りや押しだ。
さて、じつは謝らないといけないことが。大好きな大相撲の関取を目の前にし、しかも話すのは初めてなので、極度の緊張で聞きたいこと忘れてしまった…。自分、「宮崎は民放が少ないから大変ですよね」とか、今思うと「自分は何聞いとるんじゃ…」ということも聞いてしまった(豊桜関は「夕方からお昼休みはウキウキ…♪って県もありますよ」とか答えてくれた)。こんな自分でも今までいろんな業界の方々にインタビューしてきたけど、一番ダメでした…。
豊桜関、元気な相撲が魅力だけど、静かで気配りの利く方でした。
――十両復帰おめでとうございます。どうですか?
ありがとうございます。うれしいですねぇ。
――初場所の目標は幕内定着?
そうですねぇ、いい加減定着しないと。
――ところで、自分はこんなに厚着してるんですけど、力士の皆さんはこんなに寒いのにまわし1枚でビックリしました。
寒いです。土俵に上がる頃には温まってきましたけど、寒さは堪えますよ。
――下の力士たちにアドバイスをしていて感心したのですが。
関取になったら気を配れるようにならないと。
――ところで、最近の大相撲で厳しいと感じてることがあります。それは怪我。怪我をして番付をガクッと落とす力士が多いですよね…。
そうですね。怪我をしないようにするための稽古も大事なんですよ。
――そうですか。ところで、宮崎で好きな食べ物は?
「なんじゃこら大福」ですねぇ。
――なんじゃこら大福ですか(笑)
はい。あとは名前がわからなくて…。
――それではファンの方々に一言。
いい相撲を取れるように頑張ります。
勇大「同級生に負けないように頑張ります」
陸奥部屋には宮崎出身の力士が3人いる。うち2人が今回の合宿に参加していた。勇大(ゆうだい)と岩永(いわなが)だ。勇大は平成元年9月生まれ、岩永が平成元年6月生まれ。そう、2人とも平成生まれの16歳である。若いよ!
この2人に話を聞くことができた。彼らが朝食を食べ終わるのを待った。彼らは一番下っ端なので、食事も一番最後。じつは自分は朝から何も食べてなくて(しかも徹夜)、お腹はグーグー。部屋の隅っこで彼らが飯食ってるのを見ながら待つのは正直きつかった…。でも、彼らは激しい稽古をして、そしていろいろ準備とか後片付けをした後だからもっと辛かったと思う(しかもこれが毎日)。
まずは勇大。ざんばら髪で、まだ髷は結えていない。九州場所では4勝3敗、序二段昇進を決めている。稽古のとき、陸奥親方が直接指導している姿を見た。強くなりそうな空気はある。
――入門はいつ?
3月です。
――出身は?
宮崎出身です。中学は住吉中です。
――あ、自分は東大宮中だから近くだね。
そうですか(笑)
――そうです(笑) 入門したキッカケは?
相撲はよく見てて、(陸奥部屋の)昨年の合宿を見て「相撲をやりたいな」と思って。
――それが陸奥部屋を選んだキッカケにもなってるんだね。
はい。
――何かスポーツは?
野球をやってました。
――好きだった力士は?
凄いなと思ったのは小錦。
――ああ、凄かったよね。入門してからこれまでを振り返ってどう?
ちょっと物足りないですね。上がったり下がったりで…。
――辛いと思ったことは?
朝早いのが嫌でした。今はパッと起きれます。
――朝は何時から?
5時半です。
――早いね…。稽古もこなしながら、部屋の仕事もこなすというのは?
両立は大変ですね。
――付け人をしてるのは?
十文字関です。
――相撲のスタイルは?
理想は押していきたいです。立会いは頭で当たっていきたい。
――入門してから宮崎に戻ったことは?
今回、早めに宮崎で来て、実家でゆっくりさせてもらいました。
――入門からは慣れた? それともまだ大変?
今はそうでもないです。
――1日のなかで楽しみなのは?
昼の時間です。
――どういうことをして過ごすのかな?
洗濯したり、片づけをしたり。自分の時間はなかなか取れないです。
――体重は?
入門してから12kg増えました。今は103kg。ただ、序ノ口ではちょっと軽いほうです。
――103kgで軽いほうかぁ…。
同期で曹(初場所から萬華城)というのが春日野部屋にいますけど、210kgです。
――ええ! 16歳で210kg!?
はい。相撲教習所で知り合った同期が4人いるんですけど、一番出世してます。
――すげぇ…。意識する?
負けたくないけど…。
――それでは、最後に一言。
同級生に負けないように頑張ります。宮崎日大の野球部の4番が同級生なんです。
岩永「頑張りますので、応援してください」
次は岩永。こちらは髷を結っている。九州場所では2勝5敗。おとなしい性格のようだ。
――出身は?
北諸県郡の高城町です。来年(2006年)、都城市になります。
――入門はいつ?
3月です。
――入門のキッカケは?
昨年の合宿を観に来て、やってみたいと思いました。
――勇大君と同じだね。相撲は好きだったの?
興味はなかったです。
――スポーツの経験は?
スポーツ歴はないです。
――それでも相撲に飛び込んだ…。これまでを振り返っては?
前相撲から始めて、名古屋場所で2勝5敗。東京(秋場所)で1勝6敗。九州で2勝5敗。まだ勝ち越してないんで…。
――まずは勝ち越すことが目標だね。体重は?
96kgです。入った頃は108kgでした。
――え!? 減ったの?
脂肪が多かったんで、減ったんです。93kgまで痩せました。それからなんとか太りました。
――部屋での生活は?
入ってみたら、厳しかったです。
――そのなかでの楽しみは?
昼寝です。
――付き人をしているのは?
豊桜関です。
――実家に戻ったことは?
学校を卒業したときに一度帰りました。2月から東京に出てたんで。
――同期への意識というのは?
いや……。
――ははは。
同じ高城町出身の二十山部屋にいる男佑さん…。
――三段目の男佑?
はい。
――彼が目標?
はい。
――では、最後に一言。
頑張りますので、応援してください。
まずは三段目を(あとがき)
今回の合宿取材はいい経験になった。じつは勇大と岩永を待ってるとき、同じ部屋で床山さんが力士たちの髷を直していた。見るのはもちろん初めて。びんつけ油の香りも初体験だった。ブラウン管の中継では見れないものがたくさん見れた。
見学に来ていた園児たちを見て思ったことは、「力士というのはわかりやすいものだな」と。でかくて強いと感じ、親しみを持ちやすい存在なのではないかと。「力士」ではなく「おすもうさん」として。
この合宿から1ヵ月後の初場所。幕内の2人は苦しい星取りとなったけど、十両の琉鵬と猛虎浪は優勝争いに絡んだ。2人は来場所、幕内を狙える位置に上がるだろう(琉鵬は来場所入幕の可能性あり)。幕下では白馬、霧の海が優勝決定戦まで進んだ。初場所で活躍した4人のスタートが新富町合宿だったと言える。
宮崎出身の2人は厳しい場所となった。勇大は序二段で1勝6敗。序ノ口に陥落となる。序ノ口の岩永は1勝6敗。いまだに勝ち越せない。210kgの萬華城は三段目で負け越し、合宿に参加していなかった金井も2勝5敗で負け越しだ。陸奥部屋の3人はまだまだ苦労しそうだ。ただ、彼らは若い。4年経ってもまだ20歳だ。気長に見守ろうと思う。自分は勇大と岩永に言った。「まずは三段目まで上がってきて」と。三段目の上位まで来ないと、テレビで相撲を見れないから。頑張ってほしい。
投稿者 pawaspo : 2006年01月23日 03:15
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