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2005年12月14日
女性騎手の戦い! 全日本レディース招待競走 [ 競馬 ]
いま、日本には15名の現役女性騎手がいる。2名が北海道のばんえい競馬、13名が平地競走の騎手だ。
11月22日、熊本県の荒尾競馬場で「全日本レディース招待競走」が行われた。第1回の昨年は台風の接近に祟られたが、今年は好天に恵まれた。参加したのは12名の女性騎手。今年は初参加が3名いて、名古屋の宮下瞳は夏に女性騎手の最多勝利記録を更新している。楽しみは大きかった。
【レポート&撮影:照屋盛義 撮影:松田秀人】
海と緑のファミリーレジャー・荒尾競馬場
熊本県の北端、福岡県大牟田市の隣にある荒尾市。三井グリーンランドのあるこの街に荒尾競馬場はある。
荒尾競馬場の一番の魅力は景色の美しさだと思う。初めて行った3年前の夏。スタンドから臨む有明海と雲仙普賢岳に感動したことを憶えている。
このときにあったのが「霧島賞」。“九州産馬の天皇賞”と言われるレースでJRAや他地区からも参戦がある。明け3歳馬による「たんぽぽ賞」は2月に行われる。
荒尾けいばは清武町が場外発売所の設置を計画している。実現すれば、宮崎県内で荒尾けいばの馬券が買えるようになる。すぐにでも始めたい人はD-netをどうぞ。
荒尾競馬場(NAR)、荒尾けいば(公式サイト)
全日本レディース招待競走
日本にはいま、15名の現役女性騎手がいる(成績、リーディングは2005年12月12日時点のもの)。
牧原由貴子(JRA・美浦、'96年3月初騎乗、27歳、通算822戦34勝、05年29戦0勝、172位/178人)
西原玲奈(JRA・栗東、'00年3月初騎乗、23歳、通算491戦17勝、05年29戦0勝、175位/178人)
佐藤希世子(ばんえい、'02年1月初騎乗、30歳、通算1084戦91勝、05年341戦17勝、22位/32人)※不参加
竹ケ原茉耶(ばんえい、'05年1月初騎乗、23歳、通算149戦11勝、05年149戦11勝、25位/32人)※不参加
笹木美典(北海道、'02年4月初騎乗、23歳、通算547戦11勝、05年259戦4勝、29位/31人)
千田和江(岩手、'02年10月初騎乗、24歳、通算233戦11勝、05年69戦1勝、32位/35人)
皆川麻由美(岩手、'04年10月初騎乗、23歳、通算110戦2勝、05年86戦2勝、31位/35人)
牛房由美子(浦和、'99年10月初騎乗、27歳、通算322戦16勝、05年42戦0勝、16位/18人)
平山真希(浦和、'00年4月初騎乗、25歳、通算506戦19勝、05年51戦2勝、13位/18人)
宮下瞳(名古屋、'95年10月初騎乗、28歳、通算4990戦382勝、05年643戦80勝、6位/27人)
山本茜(名古屋、'05年10月初騎乗、22歳、通算97戦10勝、05年97戦10勝、24位/27人)
池本徳子(福山、'96年4月初騎乗、31歳、通算1413戦118勝、05年83戦3勝、24位/24人)
別府真衣(高知、'05年10月初騎乗、17歳、通算94戦13勝、05年94戦13勝、17位/20人)
森井美香(高知、'05年10月初騎乗、21歳、通算65戦1勝、05年65戦1勝、20位/20人)※不参加
岩永千明(荒尾、'04年4月初騎乗、23歳、通算470戦39勝、05年281戦17勝、16位/24人)
見てもらえばわかるとおり、リーディングは下から数えたほうが早い騎手ばかりだ。勝利数はおろか騎乗数も少なく、今年未勝利の騎手もいる(昨年も未勝利という騎手も)。JRAや南関東のような賞金が高くて騎手が多い地域での苦戦が特に目立つ。
地元で存在感を残してるとは言いがたい女性騎手たちだけど、彼女たちの存在は大事なものだ。まず、女性騎手は話題になりやすい。宮下瞳の最多勝記録更新はNHKでも放送されたほどだ。新人騎手はデビュー戦が新聞の記事になる。大井から新潟県営に移っていた山本泉がJRAの重賞・新潟2歳ステークスに出てちょっと盛り上がったこともある。また、成績が良くなくてもファンが多かったりする。かくいう自分も、牧原由貴子がチゴイネルワイゼンで活躍していたときは「マッキー!」と叫んでいた…。
女性騎手は男性の騎手にどうしても体力面で劣ってしまい、それは直線の追い比べで出てくる。競馬の世界はもともと男性社会だから、難しい面もある。ただ、宮下瞳のように地元で大活躍している騎手もいる。10月には3名がデビューして、2名はすでに10勝以上している。海外では活躍している騎手が多く、ジュリー・クローンは1993年に米三冠のベルモントステークスを勝ち(コロニアルアフェアー)、2003年にはBCジュヴェナイルフィリーズも勝って(ハーフブライドルド)、殿堂入りを果たしている。
日本でも女性騎手のなかからスーパージョッキーが生まれる可能性はあるし、それで競馬界は盛り上がるはず。女性騎手を育て、注目される場を与えるというのは大事なことだと思っている。
女性騎手招待競走は1997~2000年に卑弥呼杯(中津)、2001年に駒子賞(新潟県営)が開催された。しかし、いずれも競馬場の廃止で消滅している。
時をさらにさかのぼれば、国内外の騎手を招待したレディースカップ(1981~84年)、ANJレディスカップ(1988年)、インターナショナルクイーンジョッキーシリーズ(1989~93年)が開催されている。各地を転戦する華やかなもので、出場騎手がオープンカーに乗ったセレモニーの写真を見たことがある。
昨年、岩永千明のデビューをきっかけに、荒尾競馬場で「全日本レディース招待」として女性騎手招待が復活した。昨年は台風の接近で開催が危ぶまれ、全国発売が中止になるなどあったものの、地元の岩永の優勝で盛り上がりを見せた。
あれから1年。開催時期を11月に遅らせて、第2回を迎えた。昨年出場した佐々木明美(北海道)と赤見千尋(高崎)は引退したものの、初出場の3名が加わった。
全日本レディース招待競走は2レース(第7Rと第9R)の合計ポイントで競われる。1レースにつき1着30点、2着30点、3着15点、4着12点、5着10点、6着7点、7着6点、8着5点、9着4点、10着3点、11着2点、12着1点、除外2点となっている。同点の場合は第2戦の成績上位が優勢となる。
10/20荒尾競馬(てるKUNのよもやまBLOG)、西高東低――女性騎手のその後(同)
第1Rで別府が2着、第3Rで宮下が1着
この日、自分は早朝の始発電車で宮崎から延岡まで行き、延岡から3時間ほどかけてパワナビ松田氏と車で荒尾に向かった。競馬場に着いたのは第1レースが終わった後だった。天気は晴れ。風がちょっとある。普賢岳は、う~ん……雲で見えない。残念。
第1レース、10月にデビューしたばかりの別府真衣が出ていた。高知競馬の馬場管さんから「土佐のはちきん」として期待してると聞いてたんだけど……なんと2着! 5番人気でアタマ差だった。おお~。
第3レースは宮下瞳と西原玲奈が騎乗。これは宮下が4番人気で1着。最後は2頭の叩き合いをハナ差制してのものだった。女性ジョッキーがいきなり活躍している。
レース一覧、第1R結果、第3R結果
紹介セレモニー
第4レース終了後、紹介セレモニーが行われた。ウィナーズサークルに12名の騎手が並び、1人1人紹介を受ける。まわりにはたくさんのファンがいる。第1レースで2着の別府には「1レース、上手かったぞ!」、地元の岩永には「がんばれよ!」と声がかけられている。
12名によるボール投げが始まった。周囲は修羅場と化す。騎手たちは戻るとき、足を止めてサインに応えていた。
華やかで楽しい勝負
騎手といえど女性。みんな仲良くワイワイやっている。彼女たちのまわりが華やいだものというか、明るいものになっている。近くにいると心が浮ついてしまう。それは自分だけじゃない。じつは別府騎手に挨拶してるとき、地元の若手騎手がサインペンと色紙を持ってニコニコしながら待っていた。なにしとんねん(苦笑)
今日は客も取材も関係者も多い多い。テレビは2局いた。セレモニーの前後とかやたらと人がいたし。パドックの横断幕など、競馬場もいつもとは違った雰囲気だ。みんななんか楽しそうだった。
女性騎手たちは準備も楽しく会話しながらやっていた。ただ、曲がりなりにもプロ。地元のジョッキーにアドバイスを聞くなどしていた。
第7レースの装鞍が始まった。到着した馬に鞍を着けていく。調教師もやって来て、言葉を交わす。勝負のときは近づいている。……とはいっても、テレビのインタビューに応えたり、仲良く話してる騎手もいるんだけど。
第7R 小代焼窯元の会賞(サラC系、1400m)
いよいよ第1戦。ゲートを出ると笹木がハナを切る。つづいて牧原、牛房など。別府は最後方。2コーナーあたりからじわじわと進出していく。第4コーナーは牧原、牛房、西原、別府、岩永の順。そのまま直線へ。直線での叩き合い。抜け出したのは岩永だった。外から鮮やかに差しきってゴールした。このとき、スタンドはドッと沸いた。及川サトル風に言えば「はくしゅ、だいかんせい、わきおこっておりま~~す!」。
戻ってきた岩永は笑顔笑顔。表彰式では子供も「おめでとう!」と声をかけていた。
1着 ケイティビート(53kg、6番人気、岩永千明) 1:32:9
2着 シルバーレイン(53kg、4番人気、西原玲奈) 1 1/2
3着 サチノウォーランド(55kg、1番人気、牛房由美子) クビ
4着 エアートライブ(55kg、5番人気、牧原由貴子) 2
5着 ストレートパンチ(55kg、8番人気、別府真衣) 2
売得金額:11,653,000円、第7R出馬表、第7R結果
第9R 天草パールセンター杯(サラC系、1500m)
つづいて第2戦。メインレースであり、全国発売もされる。つまり、日本各地の競馬場と発売所でリアルタイムでレースが流れているということ(南関だと録画のケースもあるけど、どこかのモニターでリアルでやってたりする)。
レース前にアクシデントがあった。まずは、牧原の落馬。本馬場に入ってから落とされてしまった。ただ、大事に至らずそのまま騎乗した。さあ、いよいよ……と思ってたら除外の発表。西原の騎乗馬が準備運動中に負傷して競走除外となってしまった。ポイント制の騎手招待でこれは痛い…。売上も減ってしまう。荒尾競馬はやはりついてないのか…?
11頭のレース。千田が逃げて笹木、牧原、宮下が追走する。別府はまたも最後方。今回は向正面でも後方のまま。3コーナーをまわってやっと動き始めた。直線にかける。岩永は中団にいる。直線、笹木が先頭に立って後続を突き放す。牧原がなんとか2着に粘っている。しかし、道中は後方にいた山本と別府が伸びて来た。1着は笹木。2着は山本、3着は別府の10月デビューコンビだった。
1着 サチノマウント(55kg、1番人気、笹木美典) 1:38:5
2着 インタースカイハイ(55kg、8番人気、山本茜) 5
3着 インタークラッシイ(55kg、3番人気、別府真衣) 2
4着 マイキーライアン(55kg、2番人気、牧原由貴子) クビ
5着 シーザーフォンテン(55kg、5番人気、岩永千明) 1 1/2
売得金額:37,303,700円、第9R出馬表、第9R結果
優勝:岩永千明、2位:笹木美典、3位:山本茜
総合ポイント1位は岩永千明。昨年に続いての連覇となった。2位はメインで1着だった笹木美典。彼女も戻ってきたときはうれしそうだった。3位は山本茜、4位は別府真衣の新人コンビ。6位の西原玲奈は除外が痛かった。岩手コンビは10位と11位。女性騎手ナンバー1の宮下瞳は最下位だった。こういう招待競走は馬の能力にも左右される。
1位 岩永千明(荒尾) 40ポイント<1着・30点+5着・10点>
2位 笹木美典(北海道) 32ポイント<11着・2点+1着・30点>
3位 山本茜(名古屋) 26ポイント<7着・6点+2着・20点>
4位 別府真衣(高知) 25ポイント<5着・10点+3着・15点>
5位 牧原由貴子(JRA) 24ポイント<4着・12点+4着・12点>
6位 西原玲奈(JRA) 22ポイント<2着・20点+除外・2点>
7位 牛房由美子(浦和) 18ポイント<3着・15点+10着・3点>
8位 池本徳子(福山) 14ポイント<6着・7点+6着・7点>
9位 平山真希(浦和) 10ポイント<9着・4点+7着・6点>
10位 千田和江(岩手) 8ポイント<10着・3点+8着・5点>
11位 皆川麻由美(岩手) 7ポイント<8着・5点+11着・2点>
12位 宮下瞳(名古屋) 5ポイント<12着・1点+9着・4点>
地元で2連覇・岩永千明
メインレースと総合表彰が一緒に行われた。ウィナーズサークルにはたくさんのファンが集まっている。表彰のため知事が来ているのは驚いた。
地元の岩永が連覇を果たしたのはハッピーエンドだったか。今年の岩永は昨年ほどの成績ではないけど、騎乗数は多いし順調に育っていると思う。
以下、表彰式でのインタビュー。「今日はありがとうございます。皆さんの応援が馬に伝わって、一生懸命走ってくれました。優勝は考えてました(笑) いつも応援ありがとうございます。これからも頑張ります。応援よろしくお願いします」。
高知の17歳新人・別府真衣
12名のなかでただ1人の10代、高知の別府真衣。話した感じはほんと17歳の女の子だな~…としみじみ思った(苦笑) 同期の山本茜とはかなり仲良しのようで、よく一緒にいた。テレビのインタビューも一緒だったし。
総合成績は4位に終わったけど、存在感は残せた。まだデビューして1ヶ月だから、たいしたもんだと思う。初めての高知以外での騎乗だったし、先輩騎手たちとのレースは刺激になっただろう。
レースが終わってから話を聞いたら、笑顔で「悔しい思いをしたんで、今度こそは頑張ります!」と答えてくれた。君は高知の希望の星だ。森井騎手と一緒に頑張ってね♪
不知火食堂
競馬場に来たら、上手いもん食べんといかんちゃが! 馬券買うだけじゃないですよ、競馬場の楽しみは。
地方競馬情報誌『ハロン』の編集O氏に「荒尾で美味いものってなんすかね?」と聞いたら、「3階の特観席の食堂にある和風チャンポンが美味いみたいです」と教えてもらった。その食堂とは「不知火食堂」。パドックを見下ろせる場所にある。メインレースの前に行ってみた。
ところが、和風チャンポン(550円)は売り切れていた…。残念! というわけで、お店の方に「肉うどん」(500円)と「カレーライス」(650円)を勧められていただいた。肉うどんは肉の甘みがスープとマッチして美味しかった。宮崎人の味覚に合うと思う。
他のメニューではお弁当(500円ほど)も人気で早いうちになくなってしまうとか。ラーメン(450円)、長崎皿うどん(700円)もある。荒尾競馬場に行ったときは特別観覧席で絶景を見てほしい。お腹が空いたら、不知火食堂に寄ってみよう。今度はちゃんぽん食べてみまっす。
関連サイト
荒尾けいば
荒尾競馬場の情報は公式サイトで。年末年始も開催されていて、大晦日にはアラブの重賞・有明大賞典が行われる。
荒尾けいば(公式サイト)
高知ケイバ
別府真衣騎手が所属する高知競馬場は四国唯一の競馬場だ。土日開催が基本で、日曜は高知城と日曜市をまわってから行くのがオススメ。競馬場はまったりとした雰囲気で家族連れがけっこう多い。夜は土佐の美味いものを食うに限る。カツオのタタキ以外にもいろいろあるぞ。競馬場では鯨の串カツとアイスクリンが名物。
今回の全日本レディース招待、自分(てるKUN)が撮影した画像とパワナビ松田氏が撮影した画像をデジカメレポートに計60枚ほど載せてもらっている。見てくれよ!ヽ(`Д´)ノ
高知ケイバ(公式サイト)、デジカメレポート
投稿者 pawaspo : 2005年12月14日 01:05
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