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2005年11月03日

全国で戦う宮崎のサッカーチーム「ホンダロックSC」 <3> [ サッカー ]

 角田選手が仕事に戻ってからも、大串選手との話はつづいた。JFLのこと、サッカー部のこれまでのこと、鹿島アントラーズのこと、そして社員や県民の応援のことなど――。
大串のゴール 終了後のホンダロックイレブン

  
「5、6年で日本一を取ってくれると思う」

――JFLに参入した初年度は15位と低迷しています。これまでを振り返ってどうですか?

(大串) 自分らの力が足りないですよね。みんな納得してないし。ただ、後期になって対応できるようになってきた。手応えはあります。手が出せないリーグではない。このポジションが弱いとか、そういうのも見えている。
 来年は降格がかかるんで、1年間の準備期間をもらったと思えばラッキー。リーグが落ちると、レベルの高い選手はモチベーションが違う。落ちずにやっていければ日本一。5、6年で日本一を取ってくれると思いますよ。

(角田) ウチは他と違って、すべてがアマチュア。甘さが今年出てます。


「悔しさをバネにつなげて頑張れる」

 角田選手は仕事に戻った。ここからは大串選手にたっぷり話を聞かせてもらった。

――大串さんは入社してどれぐらいなんですか?

 8年目ですね。(サッカー部は)入ったときはひどかった。設備にしろ、いろんな条件が。同好会レベルでしたから。グランドに出れば、練習に参加しているのは3人から5人。夜は車のライトで練習してました。Kyuリーグだったんですけど、試合になって「どうする?」って感じで(苦笑) 戦術もポジションもありえなかった。

――そうなんですか。それでよくKyuリーグでやれましたね。

 でも、昔いたメンバーは熱いものを持ってましたよ。仕事してから試合に出たり。ボールに対しても、ゴールに対しても、熱い気持ちを出していた。与えられた90分で戦う姿勢、ですよ。あのときの熱さは気持ちよかった。負けたら悔しがって。それが原動力でしたね。
 もっと昔はバレーコートでやってたそうです。みんなでボールを追いかけて。大先輩から受け継がれたものが40年たっても続いている。環境が悪いから、サッカーに勝てないというのはないです。ナイター(が暗い)とか、そういうのは小さな問題。こうしてやってることは、仕事の糧にもなります。

――今のチームに足りないものは?

 スキルは40年のなかでもトップクラス。足りないのはがむしゃらさ、絶対勝つという強い気持ち。
 前期で屈辱を味わいながら負けましたけど、それがいい方向に向かっている。サン宮さんなんかは昨年変わらないといけなかった。ホンダロックだってKyuリーグで8位というのを経験してます。今のサン宮さんのほうが強かったでしょう。でも、自分たちは8位という屈辱を味わって「昨年と同じようにはしないよ」となった。そして、次は2位ですよ。補強もしたけど、選手1人1人の気持ちが大きかった。そしてここでまた、優勝できなかった悔しさを味わった。
 一番の集大成は昨年でした。「そろそろかな…」という手応えはあったし、初めて社長が「(JFLに)行けるなら行っていいよ」と言ってくれて、いいモチベーションになった。高いモチベーションがあれば、落ちることはないです。確実に上がる。悔しさをバネにつなげて頑張れる。プライドとかダメです。
 今年のサン宮さんについては、フロントどうのこうの、運営がどうのこうのいう前に、いい結果を出せばスポンサーも付いてきてくれるんです。応援してくれる人もいる。そこをはっきりしていかないと。(サン宮崎FCが目指している)Jリーグは高い。これは「目標」じゃなくて「夢」。現状では行けない。まずは手の届く目標を立てていかないと。環境に甘えたらダメです。


「鹿島戦は勝つためには何でもする」

――今はリーグ戦以外に、天皇杯という戦いもあります。

 僕らは後期に入ってから挑戦者という気持ちでやってます。先日の3回戦は栃木がなめてかかってた部分もあったでしょうね。
 (4回戦のアントラーズ戦は)やるからにはサッカー選手としてのプライドがあるし。天皇杯というのはアマプロ関係なくできる最高のトーナメントです。勝つためには何でもする。日本代表がいるとか考えない。スライディングしまくる。5点、6点入れられても獲ってやりますよ。
 天皇杯で浦和レッズとやって0-9で負けたことがあります(2000年12月3日の2回戦、浦和市駒場スタジアム。前半0-3、後半0-6。このときのレッズはJ2だった)。1回戦では埼玉SC(関東1部リーグ)が浦和とやって0-2(2000年11月25日、埼玉県営大宮公園サッカー場。前半0-2、後半0-0)。埼玉はレッズを相手に10人全員で守った。僕らは4-4-2で点を獲りに行った。「君ら怖いもの知らずだね~」と言われましたけどね。なんで点にこだわるんだろうって。あきらめない姿勢が大事なんです。気持ちいい負け方でしたよ。スタンドのレッズのサポーターから応援をいただいたし。不思議な空間でした。


「同じ県民として応援してると言われてうれしかった」

――アントラーズとの試合が、テレビでの中継されないのは残念ですよね(他のJFL3チームはNHK衛星第一でやる)。県民にホンダロックというチームを注目してもらえるいい機会なのに…。

 県民の人たちがロックというチームをわかってきたと思いますよ。
 先日の京都(10月23日の佐川印刷SC戦)で退場になったんです。会場を歩いてたら「大串さんですよね?」と声をかけられて。「高岡から来ました」と言われてビックリしました。こっち(関西)に住んでる宮崎出身の人かなと思ったんで。(しみじみとした表情で)同じ県民として応援してると言われてうれしかったです。1人でも応援する人がいれば、頑張らないといけない。


「ロッソとはやってみたい」

 ここからは雑談に近い形になった。まず自分が切り出したのは、Kyuリーグのこと。自分曰く「Kyuリーグは面白い」「ロッソ熊本とFC琉球はJFL昇格の有力候補」「サン宮の降格はほんと残念」。大串選手が強い反応を見せたのはロッソ熊本について。「ロッソとはやりたいですね~!」と。じつは、今年のキャンプシーズンに練習試合をする話があったらしい。もっとも、それは熊本に来てくださいというもので断ったそうだ。九州のサッカーがもっと盛り上がれば…という話になった。
 次に県民性。宮崎はサッカーのプレイスタイルに県民性や地域性が出てると。面白い話だったんだけど、自分のメモが読めず……スンマセン。
 フットサルについて。大串選手は試合をしたことがあるそうだ。フットサルはサッカーよりも足技が大事とか、若くない人でもできるとか、小さい大会でもいいからやってみたいとか。
 そうそう、新日鐵大分のあの独りサポーターを大串選手も知っていた。数年前からいるそうだ。「あの人は凄い」というのが互いの一致した意見(苦笑)


「勝つサッカーを見せてあげたい」

 外はたいぶ前に日が落ちている。「弱みを見せたらダメ。情けで見てもらえない」など、大串さんの話はつづいた。
 サッカー部の影響といえば、社員の人たちがサッカーの玄人になっているそうだ。「知らない人に話しかけられるんですよ。おばちゃんにも試合について言われるし」。これは微笑ましい話だ。そして、これがまた励みにもなっている。
 「勝つサッカーを見せてあげたい。従業員に夢を与えれるように。一番のサポーターですからね。県民の人たちも観に来てくれると思う。がんばります」。
 インタビューが終わったのは19時。大串選手は仕事に戻って行った。


屈辱をバネにするフェニックス

 じつは今回のインタビューの途中で、自分は夏の甲子園に出場した聖心ウルスラ学園野球部を思い出していた。彼らは「学業と野球」を両立させていた。野球だけでなく、学生としてまずは学業と学校生活をしっかりさせていた(石田監督のインタビューを見てもらえればよくわかる)。ホンダロックSCとの違いは「学業」か「仕事」かというだけだ。
 サッカーについて制約はいろいろあるけど、それを苦にはしない。仕事に対してもサッカーを言い訳にはしない。ホンダロック社員としてやるべきこと、サッカー選手としてやるべきことをしっかりやる。たとえ遠征があっても、次の日の8時には出社している。「水永なんか、試合の次の日でも朝の8時からずっと職場で立ちっぱなしです」(大串)。
 大串選手がホンダロックというチームについて強調していたのは「屈辱をバネにする」「決して下がらない」ということ。確かに今季は低迷しているけど、来季はもっとやれる、いつか日本一になるという自信を感じた。
 話のなかでサン宮崎FCのことが何度も出てきた。それだけ大串選手が気にしている、宮崎県全体のサッカーを考えているということ。サン宮崎のようなクラブチームは必要だ。

 さて、いよいよ本日、天皇杯4回戦の鹿島アントラーズ戦がある。普通に考えれば、アントラーズの絶対的有利だ。サッカーというのはカテゴリ1つ違うだけでチームの実力がずいぶん違うわけだけど、アントラーズとロックは2つ隔たりがある。しかも、アントラーズはJ1で首位を争っているチーム。
 しかし、大串選手は「勝ちにいく」と話してくれた。「勝つためなら何でもする」と。聞いていてとても心強かった。
 スポーツは相手あってのものなので、勝つこともあれば、負けることもある。ただ、今日のアントラーズ戦は何かしらの爪痕を残してくれるだろう。それが宮崎県民の心に響いてくれればと思う。

 大串選手に「若いヤツとか、これからもどんどん取材してください」と言ってもらったので、選手の紹介などやっていきたいと思います。

<おわり>

投稿者 pawaspo : 2005年11月03日 04:01

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