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2005年11月01日
全国で戦う宮崎のサッカーチーム「ホンダロックSC」 <1> [ サッカー ]
宮崎県にJリーグはない。しかし、そのすぐ下のカテゴリ――アマチュア最高峰に位置づけられるJFLで戦うチームはいる。それがホンダロックSCだ。
ホンダロックSCは宮崎では最強のチームだ。天皇杯県予選は準決勝、決勝ともに快勝だった。そしてついに天皇杯4回戦、J1チームと戦えるステージにまで到達している。そんなチームが昇格初年度のリーグ戦で低迷しているのは、それだけJFLというステージが厳しいからと言えよう。
ホンダロックSCは企業チームだ。ホンダロックという株式会社のサッカー部である。サン宮崎FCのようなクラブチームとは違う。ホンダロックSCが社内でどんな位置づけで、選手(社員)が仕事とサッカーをどう両立させているのか? 公式戦のピッチ以外でのホンダロックSCについて知ってる人は意外と少ないと思う。
先日、ホンダロック本社にてキャプテンの大串良秀選手、副キャプテンの角田亮選手にインタビューを行った。仕事の合間に時間を作ってもらっての取材だった。同じく社員であり、サッカー部の事務局長をされている福田さんにも話をうかがった。
ホンダロックSCは11月3日、鹿島アントラーズとの決戦を控えている。その試合に向けての気持ちも聞くことができた。サン宮崎FCのKyuリーグ降格が決まったいま、ホンダロックSCは宮崎で唯一の県外と戦う社会人サッカーチームでもある。今回の特集記事は彼らのことをより知ってもらい、応援してもらえるキッカケになればと思う。
株式会社ホンダロック
10月25日(火)の夕方、佐土原町の広瀬にあるホンダロック本社を訪れた。
株式会社ホンダロックは1962年に本田宗一郎氏が設立したキーロックメーカー。佐土原町の本社の他、国内では栃木や川越、海外ではアメリカにも工場がある。従業員は約1600名で、半数が本社や広瀬の工場で働いているそうだ。
ホンダロックのことは中学生の頃から知っていた。「宮崎の大きい企業は?」と聞かれたら、「ホンダロック」と自分は答えただろう。ホンダロックに勤務している同級生もいる。
福田さん「仕事もサッカーも本気」
選手たちに会うまでの時間、事務局長の福田さんに話を聞かせてもらった。福田さんはJFL実行委員も務めており、チームのことだけでなく大会の運営にも関わっている。この2日後には、来季の日程などを決めるJFLの実行委員会に参加するという忙しさだ。選手同様、ホンダロックの社員としての仕事もこなしながらである。こういう取材にも福田さんが応対している。
福田さんと話をしたのは社員食堂。ここにはサッカー部の天皇杯3回戦突破と鹿島アントラーズ戦を伝える看板が掲げられていた。あまり話はしなかったけど、事務局の女性スタッフである濱田さんにも同席してもらった。
ホンダロック社内にはサッカー以外にもいろんなクラブや同好会があるそうだ。2Fに上がる階段には、写真同好会が撮影した馬の写真などが飾られていた。スポーツでは野球が県内で強いらしい。
ホンダロックSCといえば応援の熱さ。赤色のサポーターがスタンドに陣取って、試合中ずっと声援を送っている。このテンションはホーム戦だけと思ってたんだけど、アウェイでも応援が多く集まるそうだ。関東なら栃木と川越の従業員がスタジアムに駆けつける。
自分が驚いたのは「試合のために休みを振り替えるんですよ」という言葉。どういうことかというと、ホンダロックには祝日というものがない。秋分の日だろうが、体育の日だろうが月曜から金曜なら出勤。休みは土日だけ。だから、11月3日の鹿島アントラーズ戦の日も出勤日。この試合の応援のために、日曜の休日を当てて、日曜を出勤日にしてカシマスタジアムへ応援に駆けつけるそうだ。
じつは、Jと公式戦で戦うのは今回が初めてではない。浦和レッズと対戦したことがある。このときスタジアムに応援に駆けつけたのは400名。数では浦和サポーターに劣る。でも、熱さでは負けなかった。「試合は0-9で負けたんですけど、応援はレッズに勝ったと言われました」と福田さんはニコニコしながら話してくれた。
福田さんは実行委員として、ホームゲームの運営にも深く関わっている。運営に必要なスタッフは、ボールボーイ27名を含めて約120名。これを福田さんが社員に声をかけるなどして集めている。
ボールボーイは前日の愛媛FC戦では大宮高校サッカー部が務めていた。これは福田さんが高校のサッカー部に声をかけている。宮崎学園のダンス部など、ハーフタイムショーの出演者もそう。面白いのは、どちらからも試合の後に「もう一度やらせてください」と言われるそうだ。サッカー部員にとっては、JFLのプレーを間近で観れるのは勉強になる。ハーフタイムショーは500人以上の前で演じれるいい機会だからだろう(盛り上がってるし)。「予定が決まってるので、断らないといけない」のはうれしい悩みか。
「来てよかったという企画をいつも考えてます」と福田さん。11月27日のホーム最終戦(vs YKK AP、宮崎県総合運動公園陸上競技場)ではファンサービスをいろいろ計画しているようだ。
悩みのひとつとして興味深かったのは、Jリーグキャンプシーズンの練習試合のこと。野球がそうであるように、冬の宮崎ではJリーグの10チームがキャンプを行っている。このとき、各チームから「トレーニングマッチ(練習試合)をしましょう」とたくさん申し込まれるそうだ。
ところが、これをすべて受けることができない。なぜか? 平日は会社の仕事があるから。平日の試合は無理で、土日しか試合はできない。福田さん曰く「受けたいのは山々なんですけど、断らないといけない」。でも、某チームなんかは「ウチの事情をわかって、調整してくれる」そうだ。
福田さんと話をしていて印象的だったのは、スタッフも選手も、仕事にもサッカーにも本気で取り組んでいるのだということ。自分は勝手に「仕事を削って」と思っていたんだけど、そんなことはなかった。自分は「へぇ…」と驚きっぱなしだった。これがこの取材で最後までつづく。
<つづく>
投稿者 pawaspo : 2005年11月01日 01:38