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2005年11月10日
宮崎の女子プロボクサー・上村里子 <3> [ 格闘技 ]
上村選手の話は0時になるまで続いた。インタビュー終了後はトレーニング。0時をまわってからトレーニングするボクサーはそういないだろう。自分は黙々と練習する上村選手を見守らせてもらった。
宮崎の女子プロボクサー・上村里子 <1>
宮崎の女子プロボクサー・上村里子 <2>
宮崎の女子プロボクサー・上村里子 <3>
宮崎の女子プロボクサー・上村里子 <4>
ロングラウンドは得意
――上村さんのボクシングスタイルは?
アウトボクシングです。私の階級は小さい人がほとんどで、私は背が高いほうなんです。だから、減量がキツくて。他の選手は150cm台です。
以前はスタイルが固まらないまま負け越した感じです。最近はリーチを活かすスタイルができつつあります。
――利き腕は?
サウスポーです。
――今回の相手(王座決定戦で対戦予定だったソン・チョーロン)は?
152cmの右ボクサー。イン・ファイターですね。いつ撮ったかわからないですけど、映像は月曜に届きました。見た感じ、難しい相手ではないですね。ただ、女性はいきなり成長したりするんで。
向こうも自分の1年前のビデオを見ているはず。出たとこ勝負ですね。
――試合が間近になってきて、練習内容は?
実戦形式のスパーリングが増えてきました。(リングの替わりに)縄跳びを張ってミットトレーニングを中心に、心肺機能を高めてます。
ロングラウンドは得意かもしれません。前回(2分8ラウンド)は苦痛じゃなかった。回が延びれば有利です。最初にダウンをもらわなければ、勝機は見えてきます。
湯場選手のこと
――ホームページで湯場忠志選手(前日本ウェルター級王者)のことを書かれてましたね。韓国に同行してもらいたいとか。
湯場さんは前のウェルター級王者で、事故みたいな負け方をしたんです(9月23日のvs大曲輝斉。ゴング直後にダウンを奪われて40秒KO負け)。本人にしかわからないでしょうけど、とっても悔しいはずで。「今後も頑張りますよ」と言ってたので、モチベーションをどう高めるかです。
(同行をお願いしたのは)アウェイの洗礼を知ってほしいなと(苦笑) 湯場さんの試合は日本ばかりなので、いい機会だと思うんです。何かをつかんでほしい。そして、世界を獲ってほしいと願ってます。(湯場さんは)試合経験があるので助かります。こちらは力を与えられればいい。「行きたいっすね~」と言ってもらってます。来てもらえれば、強い味方です。
※11月7日(月)に改めてインタビューを行ったときに聞いたら、湯場選手は都合で行けなくなったとのこと。地元メディアも密着取材を行うはずだったけど、世界戦が査定試合になってなくなってしまったそうだ。
「待ち甲斐」があった
――今回の試合というのは、県民の人たちに上村さんのことを知ってもらう機会でもありますよね。
最初は北朝鮮でやる予定だったんですけど、いろいろあって7回ほど変わってるんです。待ちに待たされました。8月アタマに試合しないかと言われてから…。先行きがわからないなかで練習して、ホームページでも更新できず、そして口外できない葛藤がありましたね。今はいい経験だったと思います。プラスに考えて、自信につなげられれば。
ごく最近決まったんですよ。いろいろ問題があって。長い道のりじゃないですけど、イライラして待ちました。もう、絶対のがさない! 最初は他の人にオファーがあったんです。でも、北朝鮮になって逃げた。私はどこでもやりますから。待った甲斐がありましたよ。「待ち甲斐」です。
「田舎の不思議ちゃん」「みんなで作り上げた上村里子」
――調子は?
今は48kgです。減量がキツイですね。寝る時間が少ないし。でも、私には(フィオーレという)サポートチームがいますから。「みんなで作り上げた上村里子」です。
アシックスや大塚製薬のように、サポートしてくれるスポンサーもいる。興味を持ってもらったんです。「田舎の不思議ちゃん」に(笑) 結果だけじゃなく、人がいろいろついてきてくれる。東京ではここまでいい環境でやれません。宮崎という田舎だからこそです。
やられたらやり返す
――いよいよ半月後です。
渡航日程まだ来てないんですよ(苦笑)
――会場ってどんなとこなんですか?
1万人のところです。日本以外はビッグですよ。日本だけ地味なんです。
今回はIFBAの初代王座決定戦。女性もいつくか団体があるんです。WBCF(WBCの女子王座)とか。今回の試合は韓国のプロモーターがやってます。IFBAはサイトがありますよ。
――そういや、レッスンの様子をビデオで撮影してましたね。
カメラの撮影と編集が趣味なんですよ。
――レッスンではヘッドギア着けてましたね。
スパーで鼻が3回折れたんですよ。
――鼻が折れたら、むっちゃ痛いんですよね…。
中国では大きな怪我を負いました。生死に関わるぐらいの骨折です。違う人相になって入院。静岡の浜松で再手術しました。試合終わってから、死ぬんじゃないかって思いました。
※手術では眼球を出して治したとか。上村さん、こういう話をニコニコしながら話す…。ニヤニヤしながら「ビデオ見ます?」と言われたけど、「勘弁してください」と断った。自分は大日本プロレスで数々のデスマッチを観てきたけど、ちょっとね…。話は大怪我を負わせた相手の話に。
アイツ(中国で戦ったEun Soon Choi)とやりたいんですよ。「やられたらやり返す」ですから。オファーを出してるんです。
――今はどうしてるんですか?
WBCFのライトフライ級のチャンピオンです。
――世界チャンピオン!?
はい。受けてくれません(苦笑)
――では、最後に一言。
勝たせていただくために行きます!
0時をまわってからのトレーニング
インタビューが終わったのが深夜の0時。このあとすぐに練習ということで、練習も観させてもらうことに。邪魔にならないように、自分はスタジオの片隅で動かずに声もかけずに見守るだけだ。
上村選手は身支度を済ませ、1人で練習を始めた。スタジオの中心には、4本のロープに見立てた縄跳び用ロープが4本置かれている。まずは、シャドー・ボクシング。何も語らず、黙々とシャドーを続ける。本当に「黙々」と。
シャドーの次はグローブを着けてサンドバッグ。まずは1発1発を確かめるように、黙々とパンチを打ち込んでいく。そして、徐々にコンビネーションを増やしていく。
ここで林トレーナーが来た。林さんもこんな遅くまでトレーナーとして関わっている。ミット打ちが始まった。いい音が響く。当たり前だけど、上村選手はさすがはプロ。ジャブはキチンと踏み込んで、身体全体で打っている。プロの動きは見ていて惚れ惚れする。
林さんがアドバイスを送る。打つだけじゃなく、避ける動作も入る。林さんのミットが腹に当たるたびに、ボスンという音が響く。上村選手がワンツー。パンッ、パンッと乾いた音が響く。ワンツースリー、ワンツースリーフォーとパンチが増えていく。
コンビのレベルが上がっていき、上村選手の息づかいが激しくなる。「はぁ…はぁ…」と、やや甲高くなっている。林さんが「休むな!」と励ます。
動きのレベルが高くなり、スクワットしてからの連打になった。かなりキツそうだ(疲れは残さないようにしている)。これを何度も繰り返し、練習は終わった。時刻は1:18。こんな遅くに練習しているのは上村選手ぐらいだと思う。
改めての取材を後日
練習直後なのに、上村さんは自分を外まで見送ってくれた。
そして、この取材から5日ほどして世界戦中止の情報が入り、11月に入って日本女子ボクシング協会からリリースが届いた。
「もう一度話を聞かなきゃ」と思った。中止の経緯、今の気持ち、調子など――。そして遠征を週末に控えた11月7日(月)、フィオーレで2週間ぶりに2度目の取材をさせてもらった。そこでの話を次の4回目で取りあげ、この集中連載の最後としたい。
上村さんたちは今日(10日)の朝、韓国のソウルに向けて出発する。11日は検量など。そして、12日昼の試合にのぞむ。
<つづく>
投稿者 pawaspo : 2005年11月10日 02:13
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» 上村里子、明日いよいよ韓国戦 from うしぇの思考
いよいよ明日だ。
里子さんてば、わざわざ韓国から、HP掲示板に書き込んでくれてる。
なんて、いい人なんだ! [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年11月11日 22:59