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2009年03月16日

『田舎で働き隊』回顧 【高千穂町】

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先週一週間、『田舎で働き隊』の引率者ということで、都市の若者と交わりました。
『田舎で働き隊』は国の事業で、全国各地でおこなわれていているようです。九州は、『九州のムラたび応援団』という組織が元請となります。高千穂は、言わば孫請。『田舎で働き隊』の趣旨は、田舎で働くこと、もしくはそのことに興味がある志願者が、実際に田舎にはいり実情を知ること。そして、田舎で働くシュミレーションをすること(メインはこんなことだと思います)。
僕が引率の仕事を受けた理由は、農村の情報発信、農村体験を今後の日向時間舎・藤木テツローのメインの活動として考えているからです。高千穂側の担当者が僕の仲間であること、僕自身が農村に入りたいことも、理由の一つであります。

『働き隊』の内容は受け入れる田舎でそれぞれ違うようです。高千穂の企画はというと、村で農家から農作物などを提供してもらい、6日目に商店街の空き店舗で八百屋をし、そこででた売り上げを農家にお返しするというものでした。
僕は、当初はこの企画に懐疑的でした。一週間という短期間に八百屋をだす意義と労力を考えると、そういうことよりも実際に村で農家と農作業をしたり、草刈り作業や、畦さらいをするほうが、村の実状、苦労を体感できると思ったからです。
僕が担当したのは、四人が大学生(うち二人が四月から社会人、二人が大学院へ進学)、一人が専門学生(コンセプトカフェを思案中)、一人が隣町の五ヶ瀬町へ iターン済みの方でした。専門学生の子だけ僕と同年代、あとは二十台前半。参加した理由は、ざっと言えば社会勉強だったと思います(ざっと言いすぎですが…)。

日頃、年下と話す機会が少なく、末っ子なので年下への接し方に苦手意識があります。また、人見知りなので多少の不安はありましたが、一週間、若者たちと行動をともにするうちにその不安は払拭されました。感心させられっぱなしでした。いくつか並べてみます。物怖じしない積極性、ミッションに対する集中力、物事に対する感応力。チームとしての協調性、コミュニケーション能力も非常に高かったです。みんな心根が素直なので、挨拶も気持ちよく出来ます。宮崎特有の「よだきい」姿勢はなく、集中して取り組む姿勢には目を見張るものがありました。そのひたむきさに感動すら覚えました。(なのに、次の日には自分が寝坊してしまい、びびりました)。

そして、忘れてはいけないのが、この子たちを受け入れてくれた村の度量。村人の優しさ、卓越した技術、感性のキラメキに、子どもたちメロメロ(引率者含む)。と、同時に、農家の苦労話を聴き、疲弊した商店街の現状を知り、なにか恩返しできることはないかと自分たちで考え始めていました。当初の懐疑的な考えは単なる杞憂でしかなく、働き隊のメンバーは、ちゃんと感謝の気持ちを持ち、謙虚に村人の言葉を受け止めることのできる子たちでした。

六日目には、天岩戸神社の門前町にある空き家を自分たちで内装し『ぼつぼつcafe』というお店をオープンしました。和的な空き家は夜神楽で飾られる彫物や囲炉裏でとても良い感じです。お茶とお漬け物でもてなし、椎茸やキンカンなどの農作物や、パウンドケーキなどの菓子類を販売したり、彫物制作やひょうたんの飾りの紐とおし体験、九十二歳のおばあさんの素敵な手縫いのリメイクしたお洋服が並びました。単に商品を販売をするということではなく、パソコンや手書きでポップをつくり、ひとりひとりが村人から教わったことを訪れてくれお客さんに丁寧に伝えていました。

天候は風が吹き荒み雪が舞い飛ぶ荒れ模様だったのですが、前日にチラシを持って地元に告知してまわったのと、当日に天岩戸神社を訪れた参拝客に告知したのが功を奏し、大盛況となりました。日頃は静かな商店街も元来お祭り好きな人が多いらしくて、仕事のかたわら遊びにきてくれました。たずさわった村人、商店の人が幸せな気持ちになったのも、子どもたちの頑張りがあったからこそです。その日の夜は、打ち上げがあったのですが囲炉裏を囲んでみんなで楽しいお酒がのめました。明日はお別れです。僕は宿に泊まる必要はなかったのですが、名残惜しくて残りました。午前四時が過ぎ、みんなが眠りにつきました。僕はもう少しお別れの気分に浸りたかったので囲炉裏のそばの長椅子で横になりました。

六時過ぎ、寒くて目を覚ますと、窓の向こうの山の稜線を淡い薄紫の雲がたなびいています。風に運ばれていきます。毛布にくるまったまましばらく眺めていたのですが、ある一つのことが浮かんできました。あの山にはたくさんの動植物が住んでいます。その上に流れてくる雲は、強い日差しを遮ってくれたり、恵みの雨を運んできてくれます。それは、ほんの一瞬のことですが、そのことによって山は豊かに育まれます。

村も同じなんじゃないかと思います。今回、子どもたちは雲のようにたくさんの目に見えない大切なものを村に運んでくれました。

子どもたちは、村人に感謝し、何か形を残したいと一生懸命に取り組んできました。何を恩返しできるかを考えてきました。それが子どもたちの原動力であったと思います。それと同じくしてわずかな期間でそれをすることの難しさも同時に感じていたと思います。けれども、村人は目に見えない大切なものをわずかな時間で子どもたちに与えました。そして、実は子どもたちもその取り組みをとおしてしっかりと村に恩返しをしましたし、目に見えない大切なものを残していたと思います。

昨日と今日で、子どもたちは全員、それぞれの日常に帰っていきました。今回の高千穂の村での出会いが、彼らの人生に潤いを与え、辛いことがあったときに少しでも守ってあげられるような雲のようなものであったならと思います。そのお手伝いができたことを嬉しく思います。

投稿者 hujiki : 2009年03月16日 14:00

コメント

メールまってます。
九州のムラ編集デスクより

投稿者 平義彦 : 2009年03月16日 18:36

素敵な取り組みですね。
どちらにもプラスにはたらいたどころか、その出来事をテツローサンの文章で読ませて頂いたわたしにまで心がほわっと^^なりました。
そんな活動があるんだ。
ぼつぼつcafe、お邪魔してみたかったです。
ぜひ次回たのしそうなことがある時は教えてください^^
子供も3ヶ月がすぎ、お出かけも少しづつできるようになったし、
預かってくれるじいちゃんばあちゃんがまわりに居るので笑

投稿者 ナオ : 2009年03月17日 11:54

平義彦さん、メール送りました〜!
宜しくお願いします〜!

ナオさん、うん、面白かったです♪
てなことで、文章書いたらなが〜くなっちゃった。
春は赤ちゃんにとっても良い季節かな、すくすくと成長しているね☆

投稿者 テツロー : 2009年03月17日 12:35