三福文庫トーク「ぼくが横浜に古道具屋兼ギャラリーを開いたわけ」
「旧三福」で行われた、「Tür aus Holz von neben Strand」店主・内藤正雄さんのトークイベントをご紹介!
以前、パワナビ横浜エリアで取材させていただいた、馬車道駅近くにある古道具と雑貨のセレクトショップ「Tür aus Holz von neben Strand」(トゥアーアウスホルツ フォンネーベンシュトランド)(以前の記事はこちら➡http://www.pawanavi.com/?p=14987)店主・内藤正雄さん。セレクトショップを営むかたわら、自身の経験を活かし、食やアートを融合したイベントや飲食店のプロデュース、情報を”点”と捉えてそれらを結びけるフリーペーパー「MADO berlin」の発行など、多種多様なイベントの企画運営を手がけられてきました。
今回はそんな内藤正雄さんご自身にスポットを当て、神奈川県小田原市にある「旧三福」で活動する牛山惠子さんが企画したトークイベント「三福文庫トーク『ぼくが横浜に古道具屋兼ギャラリーを開いたわけ』」を取材しました。
どのような経験を経て、現在に至ったのか。そしてお店を運営していく上で重要な事は何か、など非常に興味深いお話をお聞かせいただき、またその内容を余すところ無くレポートしましたので、ぜひともご覧ください!
(レポート:井手悠哉、井上哲朗)
旧三福
住所:神奈川県小田原市栄町3-12-8
ホームページ:http://93puku.jp/
Tür aus Holz von neben Strand
住所:神奈川県横浜市中区北仲通 4-49萬国貿易ビル 3F #303/306
営業時間:水曜日〜土曜日 12:00 – 18:00
定休日:月曜日、火曜日、日曜日、祝日
ホームページ:http://tur-aus-holz.com/
Facebook:https://www.facebook.com/MadoYokohama.TurausHolz
「旧三福」について
「旧三福」さんは、元中華料理店だった店舗をセルフリノベーションし2012年4月にオープン。
デザイン、アート、社会起業、サブカルチャー、アウトドア、環境など多種多彩なテーマで活動する人たちが集まり、互いに刺激し合い、得意わざを重ねあわせながら、自分らしいライフスタイルをつくることを目指しているシェアスペースです。
また、今回のイベントを企画された牛山 惠子さんは、「旧三福」で「三福文庫」を主宰されています。
「旧三福」へのアクセス方法
▲「旧三福」外観
当日の風景
イベント当日は、内藤正雄さんのディレクションにより、古道具や雑貨などが「Tür aus Holz von neben Strand」の世界観とともに展示されていました。
「三福文庫」主宰:牛山 惠子さんインタビュー
トークイベントのレポートの前に、今回のイベントを企画した「三福文庫」主宰:牛山 惠子さんにお話を伺いました。
Q:「旧三福」は普段どのような活動をしているのでしょうか。
「普段はシェアスペースで、平日の昼は仕事やアトリエとして使用しており、平日の夜や土日はイベントが行われています。メンバー制になっていて、それぞれが旧三福を拠点に活動しています。私が主宰する三福文庫は本をテーマとしたイベ ントを開催しています。たとえば、私が素敵な活動をしていらっしゃると思う方に選書をお願いし、それをテーマにトークしていただいたり、ブックカフェを開 いたり、古本市をやったり。ここを拠点に小田原で面白いことを、と思いながら活動しています」
Q:今回はどのような経緯でイベントを企画されたのですか?
「内藤さんとは去年イベントをご一緒させていただいた時、イベントのつくり方が素晴らしく、じっくりお話を伺いたくてお店に伺ったんです。お店はもちろんすてきでしたが、内藤さんのお話はもっと素敵で、ぜひ来ていただきたいと思い、企画いたしました」
▲「Tür aus Holz von neben Strand」店主・内藤正雄さん(写真左)、「三福文庫」主宰:牛山惠子さん(写真右)
トーク「ぼくが横浜に古道具屋兼ギャラリーを開いたわけ」
イベントではまず、多くの写真とともに、内藤さんご自身が今までやってきたこと、手掛けてきたことが紹介されました。中でも特に目を引いたのはイベントの中で提供される料理の写真。内藤さんは現在、古道具や雑貨のセレクトショップのオーナーとして活動されていますが、フードコーディネーターでもあるので、イベントの度に様々な料理を提供されています。
その後も飲食店舗のプロデュースのお話などが紹介され、次第にお話は内藤さんが中学生の時まで遡っていきます……。
牛山さん:今までのお仕事を拝見したところ、食、道具、音楽、アートの要素がありましたが、内藤さんはどのような経験をされてきたのでしょうか?
内藤さん:高校に行くよりもお金をもらいながら学べる道を選んだ方がいいと思い、中学を卒業してすぐに長野の温泉の板場の修業を二年間行っていました。なにしろ厳しい世界なので辞めていく人が多くて、気が付いたら自分のやることがどんどん増えていました。寮にいるときは帰りたくなる気持ちを忘れるために親や友人誰にも連絡をとらずに一人で頑張っていました。
牛山さん:その後はがらっと変わったお仕事をされたのですか?
内藤さん:それから何年かして、知り合いに紹介されて、横浜のクラブでバーテンをやりはじめました。もともとお酒の仕事をやりたいと思っていたので、一から独学で学び始めました。板前の修業のお陰で懐石料理は出来るようになっていたのですが、カクテルのつくり方など全く分からず、本を読み研究しながら覚えるという板前とは全く違うやり方で勉強することになりました。それからイベントの企画等のオーガナイズをしたり、いろいろなことをしていきました。その後しばらくしてたまたま雑誌を見たときに、沖縄で仕事を見つけました。地元を離れるということは自分の中で大きなことでしたが、面接などを経て、300席あるような大きな店でコックとして働くことになりました。懐石料理を作っていたときと比べて環境は全く違うものでしたが、学んできたことは無駄にはなりませんでした。しばらく働いていく内に、そこのお店には観光客はたくさん来るのですが地元のお客さんが来ないのが問題であることに気づいていき、少しずつお店のスタイルを変えていきました。その後都内に移り、レストランでバータイムの企画、立ち上げや展示のコーディネート等に関わりました。そこでは洋食の基礎を学びながらカクテルやサービス、企画等を任されていました。それから三宿にあるFUNGOのバータイムや渋谷にあるUPLINK内の Tabelaのランチタイムなど、カフェやレストランなどの飲食はもちろん、音楽や個展ブッキング、内装などの空間のコーディネートをしていました。 その後横浜に戻り、80*80(ハチマルハチマル)という地産地消を掲げるカフェに関わっている時に、横浜トリエンナーレのBankART内での期間限定のカフェのお話があり、シェフ兼フードコーディネーターとして携わりました。それから横浜のアートの世界にも携わるようになりました。
牛山さん:今のお店はどのようなきっかけではじめられたのですか?
内藤さん:もともと今の「Tür aus Holz von neben Strand」の場所には違う古道具屋さんが入っていたのですが、その方がやめてしまうということを知って、店に直接行ったところ偶然、物件の大家さんと鉢合わせまして(笑い)話していくうちにとんとん拍子で話がまとまり、古道具屋兼アートギャラリー「Tür aus Holz von neben Strand」を開くことになりました。
牛山さん:この中ではいつかお店や自分のスペースを持ちたいと思ってらっしゃる方がいると思うのですが、まず初めにやらなければならないことは何なのでしょうか?
内藤さん:動かなければ出会いは無いので、色々な所に行くのが大切だと思います。私はお酒を呑むのが好きなので、一人で様々な場所に出かけます。そこで自分に合う人を見つけられることがあるかもしれません。あとは自分にプレッシャーをかけることだと思います。既に自分の目標があるのならそれを言葉にして言い続けていれば絶対チャンスがやってくると思います。
牛山さん:では、やりたいことがカフェだと仮定した時に、場所が決まった後、次にやることは何でしょうか?
内藤さん:内装やメニューの制作もあるんですが、店に立ってくれる人の魅力が一番大切だと考えています。店に立つ人によって 場所が生かされ、店にいのちが吹きこまれるのではないかと思います。以前色々な場所で面接を担当したのもありますが、面接も含めて、先ほど言ったように、人との出会いを経験することが重要ですね。
牛山さん:スタッフ教育はどのように行うものだと考えていますか?
内藤さん:僕は必ず、従業員の目の前に空のお皿を置いて、何が欲しい?と聞いています。まだ自分が若かった頃、人にどのように仕事を教えたらいいかと考えたとき、逆にまずお客様になったつもりで何が欲しいのかを聞いてみることで面白い発想を得られることがあるのではと気付いたんです。
イベント終盤、内藤さんが発行している、情報を”点”と捉えてそれらを結びけるフリーペーパー「MADO berlin」について、ベルリンと会場をスカイプでツナギお話してくださいました。
牛山さん:内藤さんは、お店やイベントでのお仕事を「表現」とおっしゃいますよね。MADOもやはり、表現の一つの形態なのでしょうか。
内藤さん:そうですね。もうすぐ2号が出るのですが、続けていくことで多くの人に見てもらえると思っています。僕は料理もアートだと思っていますが、料理はなくなってしまう。フリーペーパーは残るので、紙の上に場を作るという意味でも自分の中でも特別な物です。
牛山さん:最後に、タイトルになった『僕が古道具屋になったわけ』を一言で表すとどうなりますか?
内藤さん:お店や場を作ったとき、料理や何かで表現することが出来れば楽しいですね。そしてそれを皆が共有することが出来る交差点のような場所にしたいと思っています。
牛山さん:なるほど、紙であっても、お店であっても、そこは人とことがらが行き交う「場」として、作られているんですね。