インテリアデザイナー『関 洋』


投稿:2010.08.11
【東京エリア】 【インテリア・雑貨】 【インタビュー】 【アーティスト・著名人】 【アート】

「デザインの魅力とは、人に影響をあたえることにあると思います。それがデザインの底力であり、難しさであり、奥深さであり、尊さであり、責任であり、やり甲斐だと思っています。良きデザインは、人を、家族を、町を、都市を、環境を変えることができると信じていますから!」

インテリアデザイナー 関 洋インテリアデザイナー 関 洋

 店舗やオフィス、一般住宅のインテリアデザインをはじめ、同時に生活空間を彩る家具や小物等のプロダクトデザインも手がけるインテリアデザイナー関 洋さん(SEKI DESIGN STUDIO)。
商業施設だけでなく一般住宅のインテリアデザインでも数々の賞を受賞。またイベントスペースや会場の企画・演出など、人が行き来する空間におけるデザインの現場で幅広く活躍している。
 近年ではアメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)との出会いから、家具の産地である福岡県大川市と広島県府中市の家具メーカーと提携し、アメリカ広葉樹の独特の木目や節や色違いといったキャラクターマークを積極的に生かしている『kitoki』というオリジナルデザインの家具ブランドを共同設立。その後『kitoki』の製品は、様々な展示会で話題を集めると同時に独自の展開を繰り広げ、着々と熱心なファンを獲得している。
インテリアデザイナー 関 洋

 関さんがデザインする空間や家具は、どれもシンプルでモダンなのに、どこか人の温かさや懐かしさを感じさせてくれる。特に形だけでなく、素材から道具としての機能面まで、充分に考えぬかれたバランス感覚に優れるデザインの家具は、洗練された都会のオフィスやホテルのロビーから、自然溢れる田舎の民家の一室まで、どのようなシチュエーションにも動じることがない。
 決してでしゃばることなく、それでいて静かに存在を主張し、付き合うほどにその深さを感じることができる……。
 彼が手がけた空間や家具達は、まさに関 洋というデザイナーの分身と言える。そこで今回のインタビューでは、「デザイン=生き様・ライフスタイルの表れなんです」と語る関さんならではのデザイン感を掘り下げるべく、インテリアデザインとの出会いから、オリジナル家具ブランド『kitoki』設立までの裏話、さらに今後の展開やデザインが持つ可能性などについて詳しくお聞きし、その横顔に迫った。
(取材:松田秀人 協力:有限会社イエムラ

SEKI DESIGN STUDIO事務所

東京都中野区本町1-2-4 ライブコープ中野坂上B203
電話:03-6300-4350
URL:http://www.sekidesignstudio.jp/
URL:http://shop.sekidesignstudio.jp/

SEKI DESIGN STUDIOアトリエ(予約制ショールーム)

東京都中野区東中野2-4-16 パークハイム東中野303
電話:03-5348-7442

 

関 洋 プロフィール

インテリアデザイナー

1966年 静岡県生まれ
1987年 中央工学校建築室内設計科卒業
1987年 スタジオオクト
1990年 真保デザインスタジオ勤務
1994年 セキデザインスタジオ設立
2001年 「ヨーガンレール広島店」JCDデザイン賞入選
2004年 「M-house」あたたかな住空間コンペティション入選
2004年 「M-house」あたたかな住空間コンペティション生活者特別審査賞
2005年 「T&K-house」あたたかな住空間コンペティション入選
2006年 「Christmas Chaka」JCDデザインアワード銀賞
2006年 「Sakura Hajimete Hiraku Chakai」JCDデザインアワード入選
その他詳細は公式ホームページ内「about」をご覧ください。

 

記事関連ホームページ

☆SEKI DESIGN STUDIO公式ホームページ</strong>
URL:http://www.sekidesignstudio.jp
☆SEKI ATELIER SHOP ショッピングページ</strong>
URL:http://shop.sekidesignstudio.jp/
☆kitoki 公式ホームページ</strong>
URL:http://www.kitoki.jp/
☆家具デザイナー 小泉 誠
URL:http://www.koizumi-studio.jp/
☆kitoki 宮崎県取り扱い店「有限会社イエムラ」ホームページ</strong>
URL:http://www.iemura.com/

 

関 洋 インタビュー

インテリアデザイナー 関 洋

 

インテリアデザインとの出会いについて

 

Q:子どもの頃から「ものづくり」が好きだったそうですね。

「僕は『ものづくり』が好きな子どもでした。生まれは静岡県伊豆半島の南西にある松崎町で、僕の父親は漁師でした。父親はとても器用で、魚をさばいたり、日曜大工も起用にこなす男でした。当時の住まいは漁師町の長屋のような小さな家でしたが、何でも手づくりしてしまう父親と、看護婦という仕事柄、母は部屋の中をいつもきれいに整理整頓していたので、とても生活がしやすかったことを記憶しています。そんな海と山に囲われた土地と、日曜大工と整理整頓が好きな親の影響もあり、僕自身も自然と『ものづくり』にはまることができました。『ものづくり』は、山に入って木を切り出してくるなどの材料集めの作業だけでなく、細々とした準備なども含め、完成までの段取りを考えるのも好きでした。この段取りこそ、今の生活や仕事を考える上で財産であり、確実に父母の暮らし方や生き方を見て育った影響だと思います」

Q:デザインに興味をもったのはいつ頃ですか。

「実はデザインという言葉の意味を意識するようになったのは、建築とインテリア関係の専門学校に入ってからなんです。高校は田舎の普通の高校でしたし、ずっとスポーツに打ち込んでいて、インテリアデザインなんてシャレた?言葉は知りませんでした。まあ図画工作は得意でしたが……。専門学校でデザインを学ぶ流れの中で、必然的に都内にある店舗のインテリアデザインなどを見て体感する機会が増えてきました。当時はバブル景気の全盛期でしたから、10代の僕にとっては衝撃の連続でね……。そんな街に溢れる様々な空間を体感する日々を過ごしているうちに、徐々にインテリアデザインに興味を持つようになったんです」

Q:専門学校での授業内容は?

「僕が通っていた学校の『建築室内設計科』は、建築とインテリア全般の設計の実質的な教育がメインで、デザインについての思考や空間のとらえ方といった方面は、残念ながら僕的には充分と思える内容ではなく、だからデザインに関する様々な情報を個人的に入手して勉強をしましたね。例えば、インテリアデザイン業界のパイオニアである倉俣史朗さんや内田 繁さんなどが手がけた店舗などがオープンすると足を運び、現場から感じとれるリアルな刺激を受けたりとか……」

インテリアデザイナー 関 洋

 

Q:専門学校卒業後、すぐにインテリアデザインの方面に進まれたのですか。

「就職の話しが出始める頃になると、友人達は『一級建築士になるんだ!』などと話し合っていましたが、僕はあまりライセンスにこだわりは無く、建築という箱の設計というより、より人に密接した『インテリアデザイン』の仕事につきたいと思ってました。デザインといえば、当時グラフィックデザインという職種もとても勢いがあり、選択肢の一つには成り得たのですが、やはり『手で立体をつくり上げる』という感覚と、『様々な人々が集う空間の力』に魅力を感じ、次第にインテリアデザインという職種にのめり込んでいきました」

Q:では平面的なグラフィックデザインにない立体ならではの魅力とは?

「当たり前のことなんですが、なんといっても立体の魅力は目に見えていない部分が存在しているということです。例えば『ガラスの上に置いて下から眺めたらどのように見えるのか?』『この物体とその後ろに存在する空間とはどのように接しているのだろうか?』などと関係性が備えていることが立体の魅力であり、見る角度や見る場所や見る時や見る人によって、いくつもの見方ができることも刺激的なんです。考え方として立体の魅力を説明することもできます。たとえば立体を住まいとして考えた場合、だれがいつどこで使い、どのように感じるのか?という思考まで考えて、デザインしていくことができますよね!家も部屋も家具も生活道具も暮らしの流れにあり、生活の一部とも言える存在だと思うんです。このように立体的な考え方をすると、無限な広がりを表現することができるでしょ!だから僕のデザインする家具や小物は、『暮らしに寄り添う存在』ということを意識してつくられます。僕がデザインしたイスやテーブルがぽつんと単体で置かれていたとしても、その回りには、床・壁・天井があり、様々なカタチや色やテクスチャーがあり、人それぞれの暮らしがあり、人が存在しているわけです。常にこれらを意識した流れの中でデザインしているから、家具や小物であっても、インテリアデザイナーらしい目線から考えられた生活道具と言えると思いますよ」

 

インテリアデザインの仕事について

 

Q:関さんがこれまでにデザインされた空間の中で代表的なものをお聞かせください。

「代表的なものとしては、天然素材を重んじるファッションアイテムや生活道具を扱っている、テキスタイル・ファッションデザイナーであるヨーガンレール氏のブティックです。彼の美学や哲学をブテックという空間に表現するために、石、金物、砂、土、木、紙など様々な天然素材と、それを加工する全国のメーカー、工房、職人、クリエイターと、向き合うことができたことは、私にとって本当に大きな財産です」

Q:今まで一番印象に残っている仕事は?

「結婚して子どもができて35歳ぐらいになった時に、自分自身の生き様やライフスタイルの大切さを真剣に考えるようになり、リアルな生活空間である一般住宅を手がけてみたくなったんです。一般住宅をデザインする上で最も大切なのは、施主の好みや価値観を読み取ることと同時に、バックボーンを探ることにあります。人それぞれの潜在意識にある『言葉では言い表せない何か』を具現化できることこそが、デザインの醍醐味だと思うんです。そんな考えのもと、『自分の生き様やライフスタイルを表現すべき!』と思い、東京の東中野にある自宅(マンションリフォーム)をデザインしました。今まで経験し学んできた住まいについてや、生活についてや、デザインについてや、素材についてや、ありとあらゆる物事に向き合い、自分なりの価値観をデザインし完成させていきました……。その結果、僕の考え方や表現スタイルに興味を示してくれた方々が、建築関連の専門誌だけでなく、様々な雑誌媒体でも取り上げていただいた効果もあり、今では、店舗よりも一般住宅の依頼が多くなりました!さらに一般住宅を手がけるようになってから、『住宅のような飲食店をデザインしてほしい』といった依頼があったり、『インテリアだけでなく家具とファブリックやカトラリーまでセレクトしてほしい』といったライフスタイル全般に関わる仕事も増えてきました。こららの展開は、店舗と住宅と家具と生活道具などのデザインを、垣根なく行き来したことで生まれた相乗効果なのかな~と思っています」

インテリアデザイナー 関 洋

 

Q:関さんが経営するデザイン事務所『SEKI DESIGN STUDIO』の公式ホームページに「わたしたちは、物質的な満足感だけでなく、精神的な充足感を与えるようなデザインを心がけています」というメッセージが表記されていますが、この言葉への思いをお聞かせください。

「ホームページを開設する時に、自分の『デザイン感』というものを言葉で表現しなければということで、自分なりの考えや気持を言葉にしたのですが……。他人や社会全体につくられてしまった『与えられた価値観』から金銭的な損得を差し引きして出てくる『あの商品がこんな安価で手に入るなんて!』といった満足感も当然あると思います。その一方で、自分がそのものの価値を見つけ出し、他人や流行との比較ではなく、自分自身の『本心の比較』によって、自分の精神を満たす心のよりどころと出会いたいという気持ちもあると思うんです。例えば、ふとした瞬間に木のテーブルや柱の木部の節を眺めたり、思わず触れてみたりした事ってありませんか?これって、テーブルや柱という既成概念と違う役割だとも言えません?僕はそんな些細な感覚こそがデザインに込められているのだと思っていて、それを『精神的な充足感を与えたい』という言葉で表現してみたんです……。アクセサリーや時計の存在を単なる飾り物ではなく、お守りや思いをこめて持つ感覚ってあるでしょ?空間や家具や生活道具もそうした『心のよりどころ』という意識を宿すことができると思っています。けっして量産品をバーゲン価格で購入できた時の満足感だとか、品質がよくないとわかっていながら安い買い物をするという価値観を否定することはありません。僕にだってそういう部分はたくさんあるし、その感覚は理解できます。だからこそ、そのような中にありながらも『人々が振り返るようなものづくり』をしなければと思っています」

 

オリジナルデザイン家具ブランド『kitoki』設立について

 

Q:近年、関さんは『kitoki』というアメリカ広葉樹を使用したオリジナル家具のブランドを設立されましたが、そのきっかけを教えてください。

「東京の青山の『Life Creation Space OVE』という店舗で、住宅のような心地よさを表現するために、ホワイトオークとウォールナットのフローリングを採用したんです。その時に材料を手配してくださった木材屋さんが、アメリカ広葉樹輸出協会(大阪市のアメリカ総領事館内に、アメリカ広葉樹についての情報提供と技術的支援、木材輸出促進を目的に設立された団体である)に加盟していて、それがきっかけでアメリカ広葉樹輸出協会の方々と知り合うことになりました。その後アメリカ広葉樹輸出協会の方から、『コンベンションでインテリアデザイナーとしで木について語ってくれませんか?』という依頼があり、参考のために今までの活動の詳細をお聞きしたんです。そして僕は、協会のプロモーション活動を理解した上で、その先にある可能性について提案させていただいたのが、アメリカ広葉樹でものづくりしていた産地メーカーとの出会いのきっかけであり、『kitoki』が生まれた原点なんです」

インテリアデザイナー 関 洋・kitoki

 

Q:『kitoki』が生み出す家具の特徴を教えてください。

「『日本人のデザイナーが日本人のリアルな暮らしを考えデザインした家具を、個性豊かなアメリカ広葉樹で表現していること』です。日本ではこれまで節や色違いは敬遠されてきましたが、僕たちは木目や節や色違いを個性としてとらえ、積極的に取り入れています。『kitoki』の家具は素材感を活かしつつ、シンプルでモダンな現代的なデザインを追求しているので、現状のリビングやダイニングに合わせても必要以上に主張せず、それでいてしっかりと存在感を放ってくれると思います。日本の住宅事情や多種多様なライフスタイルをイメージして、さらに日本人特有の動作などを考えながらデザインしているので、家具という道具ではあるけれど、身体に馴染むような感覚も宿っていると思います。また、古くから日本の生活の中に息づく道具の成り立ちや組み合わせなども理解した上でデザインしているので、単なるカタチのデザイン性だけでなく、生活道具としても非常に優れた道具とも言えると思います。できれば実際に座ったり寝転がっていただくと、その感覚がよくわかると思います。『縁台ソファー』(下)も日本人ならではの発想ではないでしょうか?」

インテリアデザイナー 関 洋・kitokiインテリアデザイナー 関 洋・kitoki

 

Q:『kitoki』という家具ブランドには、関さんの他に、<a href=”http://www.pawanavi.com/human2/archives/cat297/”>家具デザイナーの小泉 誠さん</a>も参加されていますし、メーカーは家具の産地として有名な、広島の府中と福岡の大川が参加していますね。特にライバル関係にある府中と大川のメーカーが一つのブランドに参加しているのは珍しいことだと思うのですが?

「ライバル関係にあった家具の産地である大川と府中によるブランドなど、一昔前の関係を考えるとあり得ないことだと思いますが、『<a href=”http://www.kitoki.jp/brand.html”>kitokiのメンバー</a>』はもっと先を見据えていて、恊働の意味や魅力を楽しんでいるようにも見えますよ!もう一人のデザイナーである小泉誠さんの参加も、アメリカ広葉樹輸出協会が開催したコンベンションがきっかけでしたし、この『kitoki』というブランドは製品のみならず、デザイナーとメーカー、さらに大川と府中といったメーカー同士、そしてコンセプトを理解してくださる販売店や足を運んでくださるお客様といった、人と人の関係から保たれているんです。僕の中でデザインとは、そんな人間関係も含めたバランス感覚もデザインという表現だと思っています。現在はアメリカ広葉樹輸出協会よりいただいたチャンスを、皆で協力し合い丁寧に育てているところです」

Q:家具ひとつひとつをとっても、バランス感覚の優れたデザインは相手を選ばないのがいいですね。とても包容力があるように感じますし、場面によっては、その存在を消すことも、または主張することもできるように思います。

「そう感じてもらえるのはとても嬉しいです。kitokiでデザインしている家具は、まさに今の僕だからこそ生まれた『幅』であり『バランス』だと思います。『幅』や『バランス』こそが、これまで僕が二十数年間このデザイン業界で培った財産であり、僕自身の生き方の表れだと思います。さらに『kitoki』という『ブランドが持つ幅』に関して言えば、共にデザイナーとして参加している、小泉 誠さんの存在が大きく影響していると思います。ひとつのブランドの中に、僕と小泉さんという二人の個性が存在しているにも関わらず、二人がデザインしたものをひとつの空間に並べたり、組み合わせても、何かしらの調和が生まれます。これも『kitoki』ならではの『幅』と『バランス』なんだと思います。こうした『幅』と『バランス』がうまく共鳴していくと、『kitoki』らしさが明確になり、ブランドとしての説得力と安定感が生まれ、価値ある存在になるのではないでしょうか?」

インテリアデザイナー 関 洋

 

関さんのデザイン感について

 

Q:関さんがデザインした家具からは、全体的にシンプルでモダンな印象を受けると同時に、時間の経過と共に細部に人の持つ温もりや優しさが滲み出てくるような気がします。「触れ合うほどに近づいてくる」そんな不思議な感覚を感じます。

「結婚して子どもができて、バブルが崩壊し、世の中の意識も様変わりして、少しづつ自分も年をとっていくうちに、ふと『自分とはいったいなんぞや?』なんてことを考えるようになりました……。都会での仕事や生活も、昔では考えられないほど当たり前のものとなりつつあるけれど、僕が田舎者であることは事実だし、どれだけ気どって格好をつけて見せても、子どもの頃に触れた大自然の中で体感したものが僕のデザインや生活の中にびっしりと根を張っているは当然のことなんです。しかし、東京での暮らしや仕事を通して培った自分も、もちろん今の僕の一部だから、どんなに過去の中で生きようと思っても今となっては、どちらかに大きくシフトすることは容易に出来ることではありません。自分の生き様が表面化するのがデザインなら、当然その影響が現れます。確かに素材の使い方であったり、触れた時の感覚であったりする部分は、自分自身の中にある過去の感覚がデザインに表れているかもしれません……。しかし僕が意識しているのは、今の生活に寄り添うことができるデザインなんです。いくら田舎の自然に触れてきたから、そうした感覚が僕の根底にあるからといって、あまりにもプリミティブで民芸チックな方向に走ってしまうのは、今の僕がデザインするものではないと思っています。そういう意味で『洗練された自然観』という感覚は常に意識しているつもりだし、それが、今の僕の素直なバランス感覚であり、デザインの特徴かもしれません」

Q:具体的に分析してもらえますか?

「全体的なシルエットはモダンであっても、素材自体に存在する節や木目の使い方、厚みやエッジの形状から表れる印象、またはスチールなど異素材との組み合わせによる部材の選択と加工方法などなど……。様々な関係と影響を考えていますよ。そして素材の選択で特に意識するのは、経年変化についてですね。時がたつ程に味わいが増し、長く使っていただければと思っています。例えばこのソファ(上)は、革を着る感覚で素材を主役と考え、カタチはあえてシンプルにして、素材の経年変化を楽しんでもらうことを優先しています。またキャビネット(下)は機能だけで考えると全て木で完結することができますが、あえて扉の前板に革やファブリックを貼りことで、思わず手で触れたくなるような感覚を取り込んでいます。やはり家具も、機能美は大切だと思いますが、『触れた時の感覚』や『経年変化』みたいな、精神的なよりどころもあると、より必要とされ大切な存在になるのではないでしょうか?」

インテリアデザイナー 関 洋

 

Q:お話を聞いていると、非常に「バランス感覚」を重要視されていらっしゃるようですが、それは自然と身についたものなんですか。

「先ほどもふれたように、30代半ばを過ぎて自分のライフスタイルを見つめ直し、『とりあえず』ではなく、ちゃんと自分の生き様を提示した上で他人と向き合いたい、仕事をしていきたいと考えるようになってから、自分自身が見えてきて、様々な物事に対して、考え方や感覚を自然にコントロールできるようになった気がします。そして今は何事にもながされない?(笑)ニュートラルポジションに立っている自分がいるように思います。僕自身が良い意味で経年変化していければと思っているのですが……(笑)」

Q:最後の質問です。現在、関さんはどのような活動に興味をお持ちですか。また、デザインという行為がもつ可能性をどうお考えでしょうか。

「今は、『自分自身を伝える』ということに力をそそいでいます。モノを伝えることと同時に、自分自身を知っていただくことが必要ですからね!具体的な活動としては、現在、セキデザインスタジオは『デザイン設計事務所』という位置づけだけでなく、東京の東中野にある自宅兼アトリエと、事務所とショールームを活用し、今までのデザイン設計やものづくりを通じて出会った方々や、共感し合える異業種の方と『恊働するための体制と環境づくり』を行っています。今後はもっと地域と技術と素材と人とアイデアを結び、デザイン+製造+販売までの成り立ちまでに深く関わりたいと思っています。またこのような考えや活動を多くの方々に知ってもらうための冊子やホームページも、共感し合える編集ライターとカメラマンとグラフィックデザイナーと恊働で計画中なんですよ。冊子やホームページといったものも、表現するという意味において、僕の中ではとても重要なツールなんです。このように今後も、ヒトとモノとコトと関係の成り立ちから、しっかりとしたビジョンを描き、僕らしい独自の価値観を発信し、やりがいのあるデザイン活動を継続してければと思っています。デザインの魅力は、人に影響をあたえることにあると思います。それがデザインの底力であり、難しさであり、奥深さであり、尊さであり、責任であり、やり甲斐だと思っています。良きデザインは、人を、家族を、町を、都市を、環境を変えることができると信じていますから!」

ありがとうございました。

 


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