Osteria e Bar RecaD(リカド)
「街カドから地域を再生」をコンセプトに、地どれの食材を活かした斬新なアイデアが光る創作料理と、手づくりリノベーションならではのこだわり空間が一体となった、アート感覚たっぷりの庶民派イタリアンレストラン&Bar。
今回のグルメレポートは、大分県竹田市街地中心部の街角にあり、地元でとれる食材を主役にした創作料理と、自然派ワインや地酒を豊富にそろえる庶民派イタリアンレストラン&bar『Osteria e Bar RecaD(リカド)』をご紹介します。
「故郷を若手で再生したい」との思いから、オーナーの桑島孝彦(上画像右)さんが2012年に関東からUターンしたのち、約3年越しの想いを形にして2014年末にオープン。店舗は自分や友人たちの手でリノベーションし、テーブルセットやカウンターの椅子、カップや焼き物の洗面ボウルは竹田市内で活躍する知人アーティストや作家、家具職人に依頼し、すべて店舗に合わせて造られたオリジナルばかりで、桑島オーナーのこだわりが隅々まで詰まっています。
音楽関係の仕事から料理人へと転向した経歴をもつ桑島オーナーは、Uターン後「地元再生」を念頭にコツコツと店舗再生事業やイベント企画などの活動をする中、「レストランという機能をベースに、この街になにかしらの影響をあたえ、自分たちがつくり出した価値観を浸透できないか?」と考え、オープンすることになったのだそう。
「ただ一概にレストランを経営するのではなく、竹田市の素材が生きる場所、竹田市に今までないと感じてもらえるような空気感、人が集うことで新しい企画がうまれ外へ発信できる基地となるように常に挑戦しつづけたいと思います」と語る桑島オーナー。そんな桑島オーナーのこだわりのポイントをたっぷりご紹介します。
(レポート:中本望美 モデル:田尻朋子)
Osteria e Bar RecaD(リカド)
住所:大分県竹田市大字竹田町498
電話:0974-62-2636
営業時間:火・木 17:00~22:30
水・金 11:30~14:00/17:00~22:30(LO)
土・日 11:30~22:30(LO)
(ランチは水・金・土・日曜に営業)
定休日:月曜日
駐車場: なし
道案内
▲宮崎県延岡市から大分県竹田市方面へ進み、まずは竹田市入り口付近にある『岡城跡』を目指し、トンネルを抜けます。
▲岡藩城下町『歴史の道』へ向かいます。再度トンネルを抜けます。
▲「ようこそ城下町へ」の看板(画像左)がある「運動公園入口交差点」を右折し、市街地へ。またまたトンネルを抜けます。
▲道なりに進み、中心地にあるスーパー近くの角にあります。
周辺情報とマップ
歴史ロマンあふれる城下町竹田市の路地裏を散策
岡藩時代に城下町として栄えた当時の風情が今なお残る竹田市の市街地。特に「歴史の道」には、格式ある武家屋敷の白壁や仏閣が立ち並び、当時の隆盛を物語っています。特に文化・音楽においては抜きん出た才覚を持つ人物が多く誕生し、日本南画界の最高峰・田能村竹田(たのむらちくでん)をはじめ、幼少期を竹田で過ごし、岡城阯をモデルにしたともいわれる「荒城の月」を作曲した瀧廉太郎(たきれんたろう)、童謡作家・佐藤義美が知られています。
また、上記のつながりから、現在は全国各地からさまざまなアーティストが移住するエリアの1つとしても有名です。
歴史ロマンに思いを馳せながら、用水路のせせらぎが響き渡る竹田の路地散策は旅感をいっそう高めてくれますよ☆
店舗周辺マップ
店舗紹介
もともとあった1階の外壁を壊して柱をむき出しにし、その形を活かして木の表情をプラスした外観は、古民家や商家が立ち並び江戸情緒あふれる商店街でバランスの良い存在感を醸し出しています。
街角のラインにそって建つ立派な柱の間にはオーナーが何気なく集めてきたという雑貨がディスプレイされています。
店内には大きなカウンターが設置され、店内スタッフとの絶妙な距離感が保たれているので、1人で訪れても心地よい時間を過ごすことができる雰囲気がうれしいです!
このカウンターは、近くの銘木店の倉庫に眠っていたものだそうで、築120年以上の古い屋敷で使用されていた梁を再利用したとの事。ちなみに、木そのものの樹齢も150年をこえているそうです。
色も形も不揃いなパネルをいくつも重ねて幾何学的な模様を描いた天井や、手作りのランプ、シックなカラーに塗られた柱など、内装のどこを見ても今までに目にしたことが無いような個性的なデザインが印象的です。
内装だけでなく、アンティーク調の雑貨やレトロな柄の民族絨毯が空間を彩り、『岡城』をイメージしてアーティストが手掛けたランプなどの世界にひとつだけしかない作品も多く飾られています。
カウンターの椅子の土台は鉄工所に務める友人が制作を請け負ったもの。背もたれの角度や椅子の高さを緻密に調整した自信作なのだそう。ちなみに座面は全て手づくりでデザインも素材も1つずつ異なっています。
厳選したおすすめワインや料理が描かれた手づくり黒板。オーナーの人柄が現れる手書きの文字が、店内をよりいっそうイキイキとさせています。
おすすめランチメニュー紹介
「この地域でしか実現できない本場のイタリアン」をテーマに、竹田で育った野菜や生キクラゲなどの自生する山菜、上質な鹿肉や猪肉などの食材を中心に構成され、既製品は使用せずに調味料やパスタの茹で水にまで気をつかい、可能な限りイタリア現地の味に近づけられています。さらにドリンクも厳選しされ、土地の個性を反映した”自然派ワイン”や、近隣地域で造られた酵素ジュースなど、健康的なライフスタイルに取り入れたい上質なものばかりがそろっています。
パスタランチ(スープ・サラダセット)800円
アスパラやトマトなどの新鮮な地どれ野菜、同じく竹田どれの珍しい生キクラゲ、オーナー手づくりの竹田ジビエ(鹿肉)のサルシッチャをふんだんに使用したパスタ。
そして、なんといっても注目すべきポイントは、パスタを茹でる水に、長湯温泉の「炭酸水」が使用されていること!竹田市ならではですね。
もともとイタリアの水はミネラルの風味が強い「硬水」。一方、日本は口当たりの柔らかい「軟水」で、水そのものの質が違うため、パスタの茹で上がりの状態が違うのだそう。そのため、イタリアの水の質に近い硬質の炭酸水をわざわざ組み上げて来ているのだとか。
サラダはフレッシュな地どれの野菜に加え、その日のおすすめ一品が盛りつけられ、スープも仕入れによって内容が異なります。この日は、サラダに軽く燻製されたポテトサラダに黒胡椒をトッピングしたものが添えられ、スープはフレッシュトマトがたっぷり入ったミネストローネでした。ひとつひとつの料理に遊び心がいっぱい詰まっており、思いがけない驚きと嬉しさが隠れているような料理ばかりです。
プレートランチ(パン・スープ付き)1,200円
その日に仕込みの状態が一番良い物・食べごろの料理がワンプレートに盛り込んだ贅沢なランチ!
この日は、
・リカド1番人気の「パテ・ディ・タケターニュ」という名の竹田ジビエ(鹿肉)と猪肉のオリジナルパテ タスマニアの粒マスタード添え
・野菜のフリッタータ
・自家製ピクルス
・ナスとトマトと湯布院モッツァレラチーズのグラタン
・カポナータ
・地ダコとオリーブのマリネ
でした。
パテは気になる臭みが全くなく、それでいて一欠片だけでも口の中に肉の旨みが広がる存在感がるから驚きです。野菜がゴロゴロ固められた厚みのあるキッシュやラタトゥイユは、それぞれの素材の甘さが生きた優しい味わい。特にトマトは竹田市の特産の1つで、「濃い味と色合い」という特徴がイタリアのトマトに良く似ているため、本場さながらの風味を実現できるのだそうです。
また、大分県は海に面しているため、漁業や水産加工業も盛んに行われていることから、山の自然が豊かな竹田市でも地ダコなどの上質な海の幸を手に入れることができるとの事。
▲こちらは以前レポートでお世話になった『キッチンウスダ やまカフェ』のバゲット。噛みごたえのある生地がリカドの料理にベストマッチでした。
インタビュー:Osteria e Bar RecaD(リカド)オーナー桑島孝彦さん
この地の素材・特色を活かした料理が並ぶバールとしての機能が人とのつながりをつくり、新たな風を起こすことで街が元気になる。店舗だから出来る活動や、竹田だからできる楽しみ方を提案したい。
Q:『Osteria e Bar RecaD(リカド)』の意味は?
「”Osteria e Bar”はイタリアの”はたご”や”食堂”という意味。”RecaD(リカド)”は”Re(再び)=角”という私の造語で”街の再生”を表していて、さらに”Re”には『リノベーション・リボーン・リターン』の3つの言葉が掛かっています。『人が集まる街角から再生していこう』という思いを店舗名にしました」
Q:リノベーションや内装デザインはご自身で?
「関東でゲストハウスを視察していた時に出会った、フリーランスでリノベーションを手がけるデザイナー・アズノタダフミさんのチームと共に手作業で行いました。家具や小物は、竹田市内には私の友人が陶器・鉄鋼・裁縫・家具などのさまざまな分野で活躍しているので、すべてオリジナルで制作してもらいました。この地域には優れた人・モノが本当にたくさん集まっているので、私自身が竹田のすばらしさを再発見しています(笑)」
Q:以前は何をされていたのですか?
「私は音楽が大好きなので『竹田市にライブハウスをつくろう!』という思いから関東でライブハウスやレストランに勤めながら経営や料理を学んでいました。30歳を越えた頃に、それまで培った知識や技術を活かして地元の街を元気にしたいという思いが強くなり、2012年に戻ってきました」
Q:Uターンして最初にしたことは?
「18歳の頃に夢見ていた『ライブハウス』という仕事は20歳を過ぎた段階で『ライブができる飲食店』というものに変わっていました。その後、関東で出会った『ゲストハウス』の魅力にとりつかれ、ゲストハウス経営を考えるようになり、その中で飲食の仕事を生かせればと考えていました。しかし、なかなか理想とする物件がうまく見つからずどうしようか悩んでいました。 そんな時に竹田市で『空き家バンク』という仕事を募集しているという話を聞き、自分が空き店舗を探すときに不自由に感じた部分を移住希望者の目線で紹介することで、空き店舗と人とのマッチングができると思い、U・Iターン者へ店舗を紹介する竹田市の『空き家バンク』の仕事に就職しました」
Q:レストランを経営しようと考えたのはいつ頃から?
「空き家バンクをしながら、自分がどうしたいのか、何が目的なのかを整理してたどり着いたのが、もともと関東で働いていた『レストラン』というカタチでした。地元で育ったすばらしいたくさんの食材を『料理』という形で多くの人に伝えることができる、今まで培った関東とのパイプで竹田の上質な食材で開発した商品を広め、竹田の知名度を上げることができると考えました」
Q:料理のテーマは?
「イタリア本場のバールさながらの雰囲気や味を大切にしながら、竹田のポテンシャルを活かしつつ、近隣地域の上質な食材を探して起用して、この場所だから実現する内容にしています。そこに自分のアイデアを織り交ぜることで食べてくれた人が『こんな食べ方あったんだ』とか『竹田市で本場の風味が味わえる』と驚いていただることで、わざわざここに足を運ぶことの付加価値をつけることを意識しています」
Q:リカドから発信される企画商品にはどのようなものがありますか?
「実は竹田の猟師チームは腕がよく、鹿肉においては本場のジビエ料理で使用されいるものや他地域よりもかなり上質で臭みのないものがほとんどです。また猪肉は一般的に好まれていませんが、旨味の凝縮度合いは他の肉類に勝るものがあります。そのすばらしさを知っていただきたいので、竹田のパテやソーセ−ジを作っています。また、竹田ブランド『豊の軍鶏(しゃも)』レバーのパテなど、この地域でしかうまれない商品を発信する予定です」
Q:店舗以外に、オーナーご自身が活動していることは?
「現在は街なかの路地裏をフィールドとしたイベントを企画しています。”ナンバー0”からスタートして、数を増やす予定です。また、竹田で活躍するアーティストや若者たち有志で、街をサポートする『Cheer・Taketa』チームをつくってイベント情報を発信したりなどでしょうか。田舎生活に憧れて移住してくる方も多いのですが、その先にある生活には、楽しもうとする意志が必要です。私自身が仕事もプライベートも関係なく意思をもって田舎暮らしを楽しんでいる姿が、何かしらの生活の手引になればうれしいですね」
お忙しい中、ありがとうございました。