帆足本家『富春館』カフェ桃花流水
『自然・手仕事・先人の知恵』をコンセプトに、生活の原点である、衣・食・住に彩りを添える様々なアイテムが満載の「帆足本家『富春館』」。新旧の文化が融合する空間に、カフェ、レストラン、ギャラリー、和菓子店、デリの5店舗を展開!
今回のグルメレポートでは、大分県大分市内を通る交通量の多い国道10号線のすぐ東側に位置しながら、まるでそのエリアだけ時間が止まってしまったかのように、静かに歴史的建造物が立ち並ぶレトロな空間、戸次(へつぎ)本町にある「帆足本家『富春館』カフェ桃花流水」をご紹介します。
『富春館』が位置する戸次本町は、江戸末期から戦前にかけて繁栄した頃の歴史的な町並みが今尚残り、地区固有の伝統的な文化が今も息づいている町です。そして『富春館』は、「生活文化の本来のあるべき姿」を見直し、生活の根幹を支えている「衣・食・住」において、生命や有機、発酵・熟成、エコロジー、食の安心安全を基軸とし、地元で採れた新鮮な食材を提供することはもちろん、「自然素材(木・竹・草・土・絹・麻・もめん・石)」を使った作品づくりを基本とする、日本各地で活躍するアーテイスト達の手仕事からうまれた作品等を展示販売する等、カフェ・レストラン・ギャラリー・和菓子店・デリの5店舗を展開しています。
もともと帆足家は、江戸末期から昭和にかけて農業のかたわら『造り酒屋』として財をなした家で、その酒造蔵は現在「大分市指定有形文化財」に指定され、また帆足本家の母屋は1863年(慶応元年)に建てられた歴史的価値が高い建築物なのだそうです。
ちなみに帆足家は、当時、南画家・田能村竹田ら多くの文人墨客を迎え入れた家としても知られており、「現代においてもこの家が、多くの客人と文化の息吹が漂う場所であってほしい」との強い思いから、10数年前に自宅の母屋を改修・改築し『富春館』として再興。
現在では、歴史的建築物が醸し出す味わい深さに、当時活躍した文人達と現代のアーティスト達の作品が融合した幻想的な世界が相まって、戸次本町でしか体感できない「芸術的なレトロ空間」に注目が集まり、新たな観光スポットとしても話題となっています。
(レポート:中本望美)
帆足本家『富春館』
・レストラン/カフェ「桃花流水」
・菓子店「一楽庵」
・ギャラリー「富春館」
・LIFE&DELI「富春館」
住所:大分県大分市中戸次4381番地
電話:097-597-0002(代表)
Fax:097-597-0029
営業時間:10:00~17:00
定休日:月曜日(祝祭日の場合は翌日)
URL:http://www.hoashi-honke.com/
道案内
大分市内の国道10号線にある『中村交差点』を、宮崎県延岡市方面から大分市中心部方面に向かっている場合は右折となります。
▲実際に右折する交差点の手前に、大きな右折する道(画像☓印)がありますのでとても間違いやすいです。ご注意下さい!ちなみに大分市中心部方面からの場合は、下記GS及びスーパーの看板を目印に左折となります。
▲GSとスーパーの看板が目印!
▲スーパー脇の路地をしばらく道なりに進むと、左手に広い駐車場と『帆足本家 富春館』の看板があります。
周辺マップ
歴史と文化が息づく戸次町に広大な敷地を持つ帆足本家『富春館』
町並みを歩くと、まるでタイムスリップしたかのような歴史的建造物が立ち並んでいます。この地区は、古来より大野川を利用した水上交通が盛んで、多くの人や物資を積んだ船が行き交っていたのだそう。
江戸時代から明治にかけては、大野川の海上輸送に加え、日向街道(現在の国道10号線)も参勤交代や物資の輸送手段として発展し、活気にあふれた町並みでした。戸次本町は今尚当時の面影を残しています。
その中で、戸次の大庄屋であった帆足家は、江戸末期から明治にかけて建築された建物を当時の形のままで数多く残しており、ひときわ目立つ大きな門構えから奥まで続く広大な日本庭園、歴史ロマンが息づく西洋館など、訪れる人の目を楽しませています。
▲幕末から明治にかけて築造した大きな酒造蔵は、平成7年に大分市へ寄贈。平成11年に「大分市指定有形文化財」に指定をされ、地域文化の学びの場としても活用されています。
ちなみに『富春館』は館号。「富春」は帆足家醸造の銘酒の名であり、帆足家が支えていた文人墨客のひとりである儒学者「頼山陽」によって命名されたのだそうです。
敷地内の風景☆
門をくぐると、丁寧に手入れされた広大な日本庭園があり、敷地内のさまざまな場所に、日本家屋・蔵・西洋館など、それぞれに個性あふれる建造物が佇んでいます。
敷地内のありとあらゆるポイントで、現代の日常生活ではなかなか意識することのない、日本の美意識や歴史ロマンをゆっくりと体感することができます。
カフェ『桃花流水』をつつむ風景をご紹介☆
明治時代の蔵を補修した味わい深い店内で楽しむ、日本古来の技術で創作された料理やスイーツの数々☆
帆足本家『富春館』が展開しているカフェ・レストラン・ギャラリー・和菓子店・デリの5店舗の中から、女性だけでなく男性グループやお年の方々など幅広い年代層から特に人気を集めるカフェ『桃花流水』をご紹介します☆
▲庭園から見たカフェ『桃花流水』の外観
▲敷地入り口の門(左) カフェ『桃花流水』店舗入口(右)
「桃花流水」の名は豊後竹田の出身で文人画家、田能村竹田(たのむらちくでん)の『理想郷』を表して作品から付けられたとのこと。
明治時代に「蔵」として使用されていた建物を改修し、2階建ての現代的なカフェとして新しく生まれ変わった『桃花流水』。店内のインテリア・ディスプレイは全て帆足家に伝わる文人墨客の作品や、代々伝えられた芸術品の数々を用いたそう。また、テーブルなどの家具は、酒樽の蓋やせいろを再利用したオリジナルのもの。
【1階風景】
蔵の中を補修するだけに抑え、壁の質感や天井の太くてたくましい梁がそのままデザインとして活かされています。100年以上経った今でも微動だにしないしっかりした造りから、当時の建築技術に驚かされます。
【2階風景】
▲ディスプレイされた雑貨やインテリアは、販売されているものもあります!歴史的価値のある貴重なものばかりなので、興味のある方はぜひお早めに!
▲美しいガラス製のオーダー用の呼び鈴♪(右)見た目の可憐さに惹かれ、オーダーとは関係ないタイミングで、思わずベルを鳴らしてしまいそうです。
家具・雑貨・インテリアだけでなく、店内のいたるところから経年変化の効果ならではの存在感と豊かな日本文化が感じ取られ、温かな空気感で包まれているのが印象的です。
カフェ『桃花流水』メニュー紹介☆
食材は戸次の特産品である『ごぼう』を中心に、地元で取れる完全自然農法による野菜を基本としたメニュー構成になっています。普段から口にする食材を使用して、『おいしいという”味覚の喜び”と、体に優しいという”体の喜び”を感じていただきたい』という思いから、調理工程のひとつひとつにおいて時間をかけ、手を抜くことなく丁寧に仕上げられています。
元気が出る発酵ごぼう弁当 1,680円(ごぼうコーヒー付き +210円)
(隣接する『レストラン桃花流水』でも注文可能)
元気が出る「発酵ごぼう弁当」はカフェで一番人気のメニュー!人気が高いため、予約することをおすすめします!
体に優しい『発酵』の技術と、地元特産の『戸次ごぼう』がたっぷりつまったお弁当☆
香りが良く、栄養価も高いことで知られた戸次特産のごぼうの特色を活かした料理と、造酒の過程で欠かせない『発酵』の技術を駆使した料理が色とりどりに詰め込まれた贅沢で身体にやさしいお弁当。
素材を発酵させることによって、微生物の力が働いて栄養価が高くなり、さらに元々の素材にはない風味がプラスされて、別の食品として生まれ変わった発酵食品は、抗酸化作用や整腸作用があり体に優しいと言われています。もともとの素材のままで食べるよりも、発酵することで体に優しい作用がアップするのだそうです。
▲戸次ごぼう豆腐(左) ごぼうのキッシュ(右)
▲戸次ごぼうの一本揚げと季節の天麩羅(左) 発酵玄米(右)
▲安納芋の自家製甘麹掛け(左) れんこん餅(右)
詳しいおしながきはこちら☆
・ごぼう豆腐
ごぼうのすりおろしと、だしをはす粉で練り上げた桃花流水ならではの豆腐。ごぼうの香りがふんわりと口に広がります。
・放飼い有精卵の7日間塩麹漬け
高タンパクで濃厚な卵に麹を加えて長時間熟成させたもの。いっそううまみが増しています。
・季節野菜の白和え
ほんのり出しで火をいれた季節の野菜の白和え。和え衣に、餅米と黒米を30時間かけて発酵させた自家製甘糀を加え、優しい甘さが野菜を引き立てています。
・有機野菜とお豆腐と麻の実のサラダ
ブイヨンで炊いた根菜とフレッシュな季節のサラダ。自家製ごぼうドレッシングがいっそうヘルシーさをアップさせています。(ドレッシングはLIFE & DELIで購入可能。後記参照)
・有機じゃが芋のマスカルポーネサラダ
有機じゃがいもとマスカルポーネチーズを練り上げたクリーミィなサラダ。パンなどにトッピングしても相性が良さそう!
・甘麹入り筑前煮
具材のひとつに地元の老舗・柴田豆腐店の手作りこんにゃくを使用し、甘糀をいれて柔らかくしっとり仕上げています。(こんにゃくはLIFE & DELIで購入可能。後記参照 )
・安納芋の自家製甘麹掛け
糖度の高い安納芋と、自家製甘糀の香りと甘さが絡みあって、デザートのような感覚のひと品。甘糀の甘みは、原料のお米本来のものだそうです。
・ごぼうのキッシュ
ごぼう、玉ねぎ、エメンタールチーズ、生クリーム、しめじ、ベーコン、自然塩入りの自家製キッシュ。(LIFE & DELIで購入可能。後記参照)
・鶏肉の山椒焼き
鶏肉じっくりと焼き上げて余計な脂を落とし、パリっとした皮に肉の旨味がしっかり閉じ込められています。
・ごぼう1本揚と季節の天ぷら
しっかりと味つけされた長い一本のごぼうと季節の野菜の天麩羅を盛り合わせです。
・発酵玄米
玄米と小豆を炊いたものを数日間寝かせ、発酵させたもの。腸の調子を整え、デトックス作用があるのだそうです。
・お豆腐のみそ漬け
みそで熟成させたお豆腐。まったりとしてまるでチーズのような風味です。
・麹が香る味噌汁
上質な麹からできた熊本「卑弥呼」のハト麦みそを使っています。(味噌はLIFE & DELIで購入可能。後記参照)
・れんこん餅
和三盆糖など上質な甘さをブレンドし、はす粉でんぷんで練り上げたオリジナル和菓子。(一楽庵にて購入可能。後記参照)
トマトベースのパエリア『桃花流水』風 1,260円
放し飼いにされたシャモのブイヨンにオリジナルトマトソースでお米を炒めて炊き込み、すべての旨味をお米にギュッととじこめた贅沢なごはん料理。旬の野菜がトッピングされ、ヘルシー感がいっそうアップしています。
ごぼうコーヒー 420円
(戸次ごぼうスティック添え)
戸次特産のごぼうを焙煎してできたコーヒー。同じく戸次産ごぼうを蜜煮したスティックを添え、コーヒーのおともとしてだけでなく、マドラーのように混ぜながらいただきます。他では味わうことのできない和風なコーヒー。ちなみに、戸次ごぼうスティックは『LIFE & DELI』で購入可能です。
和ティーセット(煎茶付)578円
(プラス105円で抹茶に変更可能)
富春館特製の和菓子3種がセレクトされた贅沢なセット!(季節により内容が変わります。)
おすすめ和菓子3種
・ひさご(白い練りきり)
中はみそ味の黒糖入りこしあんの練りきり。ごぼうのピールがひょうたんのヘタを演出しています。(菓子処『一楽庵』で購入可能。後記参照)
・れんこん餅(琥珀色)
和三盆、白下糖、オーガニックシュガーを贅沢にブレンドし、はす粉でんぷんで練り上げた琥珀色のお餅です。もちっとした食感とつるっとした喉越しが心地よく、上品でやさしい甘みが印象的。冷たく冷やして食べるのがおすすめです。(菓子処『一楽庵』で購入可能。後記参照)
・抹茶ういろう
京都小倉山の上質抹茶を使用。抹茶の苦味がしっかり活かされ、ほんのりとした甘みが特徴です。(菓子処『一楽庵』で購入可能。後記参照)
スイートティーセット 945円(ドリンク付き)
くるみとカシューナッツのキャラメルケーキとチーズケーキ、さらにプチシューを組み合わせ、いろいろな味を楽しめるスイーツプレート。(季節によって素材が変わります)
おすすめ3種
・くるみとカシューナッツのキャラメルケーキ
オーガニックシュガー、放し飼いの鶏の有精卵、無農薬小麦粉を使用。ラムレーズンの香りと濃厚なキャラメルには、かなりのインパクトがあります。(LIFE & DELIで購入可能。後記参照)
・木の芽のチーズケーキ(季節限定)
今回の木の芽は『葉山椒』。濃厚なチーズケーキの風味をかき分けて、爽やかな葉山椒の香りがすり抜けてきます。(LIFE & DELIで購入可能。後記参照)
・プチシュー
卵や粉などの素材を吟味して、シューからすべて手作りした本格的なシュークリーム。甘過ぎず、ベタつきのないさらっとしたクリームが印象的です。
それぞれのスイーツが異なった、独特な『桃花流水スタイル』に仕上げられているので、ひと口ひと口ゆっくり楽しんでみてください☆
この他にも、隣接する『レストラン桃花流水』では、季節の野菜と地採れのごぼうを中心とした和食コース料理(人数に限定あり・要予約)が用意されて います。大正時代に蔵から洋館に改築されたレトロな歴史的建造物で、帆足本家に伝わる年代物の器を中心に彩られた和食コースが用意されています。
長い歴史を感じさせる空間でお料理を堪能するのもおすすめですよ☆
レストラン『桃花流水』(要予約・人数限定)
電話:097-597-7676(レストラン直通)
営業時間:11:30~15:00
定休日/月曜日(祝祭日の場合は翌日)
その他の店舗紹介〜LIFE&DELI 富春館〜
富春館オリジナルの食品だけでなく、全国からセレクトした匠の作品、地元生産者・製造者が製法にこだわって作るジャムやチーズ、味噌などがそろう、日本の文化が凝縮された現代的空間☆
元は長屋だった建物を改築した店舗(富春館と通りを挟んで向かい側)は、平成25年4月末にオープンしたばかり。館内のカフェやレストランで提供している戸次特産のゴボウをはじめ地元農家の野菜を使った手作りのドレッシング、パスタ、ソース、パン、ケーキだけでなく、「自然の物、昔ながらの手仕事の素晴らしさも知ってもらいたい」との思いから、大野川上流域を中心とした生産者、製造者らが材料や製法にこだわって作ったジャムやチーズ、昔ながらの手法で造ったみそなど、「体に優しい」「旬のもの」をコンセプトに取り揃えられています。さらに、丁寧な手仕事によるシュロのほうき、馬毛の歯ブラシなど、全国からセレクトして集められたアーティストの作品や雑貨が豊富にそろっています。
ディスプレイには、造り酒屋時代の酒だるのふたや、こうじを入れていたもろぶた、暮らしの中で使っていた器や箪笥、長持ちなどを用い、古き良き時代の面影と、現代のデザインが織りなす空間が魅力的です。
おすすめピックアップ☆
▲戸次ごぼうパン 5個入り 525円
玄米酵母と米粉をたっぷり使い、戸次産ごぼうを基本として毎日手作りするパン。モチモチ感、しっとり感が特徴的でクセになりそうです。
▲有機にんじんくるみパン 3個入り 315円
豊後大野ウジャマー農園から仕入れた胚芽入り無農薬小麦粉をしようした、ミネラルとカロチンたっぷりのヘルシーパン。
▲りんごのタルト 315円(左)/お芋とりんごのパイ 315円(右)
▲木の芽のチーズケーキ 315円(画像左半分)/キャラメルナッツケーキ 315円(画像右半分)
▲ロールケーキ 1本1,365円
▲たけのこのキッシュ(わらび入)367円(左)ごぼうのキッシュ367円(右)
▲ベーコン&ほうれん草のキッシュ 1ホール1,575円 1カット315円
▲オリジナル特製トマトソース 840円(右)/オリジナル特製ピザソース 420円(左)
左:半日以上かけて煮詰めたカシューナッツ入のソース。パスタやお肉・お魚・野菜ソテーなど、いろいろなお料理にマッチします。
右:カフェのピザに使用している優しい風味のソース。ピザトーストにもおすすめです。
▲名物戸次ごぼうドレッシング 420円(左)/戸次にんじんドレッシング 420円(右)
左:カフェ『桃花流水』オリジナルの食物繊維たっぷりドレッシング。カフェのサラダにかかっています。
右:カフェ『桃花流水』オリジナルのカロチンたっぷりの体に優しいドレッシング。
▲カニ醤油の塩こうじドレッシング 630円(左)/ポルトガル産オーガニックオリーブオイル漬け(右)
▲ポルトガル産オーガニックドライトマトグリーン840円(画像手前)/アーティチョーククリーム 840円(画像奥)
▲笛吹きガラス
千数百度のルツボからオリジナル原料のガラスをパイプに巻きとって息を吹き込む笛吹き技法により、ひとつひとつに個性が現れている作品。
▲錫(すず)の作品
▲絵空人手作りコンフィチュール
千歳の昔ながらの露地栽培でつくった低農薬のイチゴのコンフィチュール 大960円 小680円
▲豊後竹田 ジャム暦 小399円 大750円
旬の果物や野菜を地元のお母さんたちが手摘みした素材を使用した自然な甘さがうれしいジャム。
普段の生活にほんの少し取り入れるだけで、部屋や食卓の雰囲気、料理の風味を格段にアップさせてくれるものばかり。豊富な品々の中から、きっとお気に入りが見つかりますよ!
菓子処 一楽庵
安政4年(1775年)から始まった帆足家の先祖が酒造に込めた思いを「お菓子で表現」したのだそうです。自家製の菓子には身体に優しい素材のみを使用しているとの事。
一番人気の「れんこん餅」や季節限定のお菓子など、店内おショーケースの表情はさまざまで、それぞれの作品に造り手の思いやりやユニークさが感じられます。
▲れんこん餅 カップ入り420円/れんこん餅 箱入り840円
▲ひさご 1個189円(左)/空豆 158円(右)
ギャラリー 富春館
『ここでしか感じることが出来ないもの』をコンセプトに、自然・手仕事・安心から生まれた作品がそろう!
日本に限らず、世界にも目を向けてセレクトした良質な生活雑貨や、著名な作家や若手アーティストによる陶芸作品、また、染めの原料や織りの技術からこだわった衣料など、『富春館』ならではの多様な文化が息づくギャラリー。
離れまで続く奥行きのある母屋に隅々まで常時展示販売されているので、長時間かけてゆっくり作品を見てまわると、1日では納まらないかもしれませんね♪
▲帆足家が温めてきた母屋の文化財産を惜しげもなく展示されています。
▲伊藤博文氏がここを訪れた時に残した扁額。
▲取材当日に開催されていた、ぬりもの師『赤木明登』氏の作品展。
▲Yoko Takeshitaのニットブランドで知られる『竹下洋子』さんの作品。
作家名(一部)
・秦泉寺由子 [GRASS HOUSE] キルトバッグ・青竹染のコットンシャツ
・原口良子 [SIND] 柿渋染め衣
・鳥居節子 [AVRIL] ニット
・高見佳乃 竹のバッグ
・陶器 ひろすえたかこ
・陶器 高木逸夫 [無風窯]
古くから伝わる伝統的な技法で作られた体に安心な素材・丁寧な作業で生まれた作品は、見て、触って、使うほどに自分だけの風合いが醸しだされてきます。ゆっくりお気に入りを見つけ、長く愛用してください☆
インタビュー 『富春館』総支配人 帆足めぐみさん
食・雑貨・建物が一体となり、古い空間に現代のものが融合したような新感覚の空間で、訪れた人が『ホッとする場所=理想郷』となる場所を丁寧に創り続けたい。
▲帆足めぐみさん(左)
Q:帆足本家『富春館』のことを教えて下さい。
「帆足家は、現当主が15代目となります。江戸末期から昭和47年まで、造り酒屋として栄えた家でした。当時はたくさんの文化人たちに活動する場所を提供し芸術家たちを支え、様々な形でサポートをしていたそうです。この館号『富春』は帆足家醸の銘酒を意味し、頼山陽によってこの名を伝えられたものです。重要文化財となる作品を多く残した『田能村竹田』も、ここ帆足家で過ごしましたし、当家から竹田に入門し南画家として『帆足杏雨』の名を残した芸術家もいます。自分の世界を生きる芸術家たちが自由に行き来し、その芸術を楽しむ人が交流するような、居心地のいいサロンだったのではないでしょうか。現在、残された数多の芸術品は、たくさんの方に見て楽しんで頂きたいと思い、大分市美術館をはじめ、さまざまな美術館に寄贈させて頂いています」
Q:帆足家の敷地で店舗展開をしようと考えたきっかけは?
「14年ほど前ですが、大分市の文化財として保存したいとのお話しを頂きました。敷地は2000坪ほどあり、その中の帆足の酒造場の規模の大きさは西日本一といわれ、さらに母屋をはじめ、蔵、洋風館など健在150年を超える歴史的価値の高い建物があります。もしそうなれば、建物や敷地を修復して頂くことができるので、代々続く帆足家とはいえ、さすがに広い敷地を自分たちの手で修繕するのはむずかしい問題だったこともあり、そうさせて頂こうと考えたことがありました。しかし、もし公共の文化財となれば、この文化的作品や長い歴史を乗り越えた建物はいい状態で管理されますが、自由に出入りすることも、触ることも出来なくなってしまいます。ですから、この家と敷地を活かしながら多くの人が出入りし交流する、昔のように文人墨客が交流していた『自由なサロン』の形を受け継ぎたいとの思いが強くなり、結果、酒造場は文化財として頂きましたが、母屋や蔵は、自分たちの手で、再興しようと決めました」
Q:きっとやることがいっぱいだったと思うのですが、まずは何から手がけられたのですか?
「最初は、母屋や蔵を片付けるところから始まりましたね(笑)。自分たちで掃除をして、可能な限り改装・補修する所からスタートしました。家や酒蔵を活かして何かしたいと思いつつも、これまでに商売などをした経験がありませんので、まずは日本全国の様々な古民家や保存地区を見聞し、どのように活かされているのかを勉強しましたね」
Q:現在は合計5店舗ありますが、店舗として最初にやった企画は?
「13年前に4日間だけ作家さんを招いて展示会を行い、抹茶やコーヒーを提供しました。テーブルは、片付けしたときに大量にでてきた酒樽の蓋、せいろなどを組んで手作りしたものでしたが、そのテーブルセットを見たお客様が感動して楽しげにしている表情がとてもうれしかったのをしっかりと覚えています。人々が自由に交流する場所、非日常的な空間、帆足本家ならではの演出など、『ここでしか感じられないもの』を創りたいと思いながら、今も奔走中です」
Q:経験のなかったカフェを始めたときの印象は?
「カフェといっても蔵にはしっかりした厨房もないので、最初は樽をひっくり返した作業台とポット1つで、お茶とコーヒーのような簡単な飲み物だけでした。しかし、ゆっくり過ごすには飲み物だけでは物足りず、少しずつ抹茶やコーヒーに合う軽いスイーツを用意しました。すべて手作りで、安心・安全なもの、そして上質なものにこだわりました。この蔵や敷地が乗り越えた歴史の重さや価値に見合った内容にして、自信をもって提供させていただいておりましたが、そんなやる気とは裏腹に、この場所が国道10号線から見えにくいことや、もともと知名度のある観光地等ではなかったこともあり、今ひとつ集客できないといった時期が続き、経営の難しさを感じたのを覚えています」
Q:現在は終日満席でにぎやかな様子ですが……。
「はい、現在はおかげさまでオープンしたその時間からお客様がお越しいただけるようになり、お席もお食事も予約で埋まってしまうことも多くあります。しかし、そんな光景がみられるようになったのは、この2〜3年のことで、実はかれこれ10年以上はお客様が少なく、さみしい日が続いていました。しかし、だからと言って自分たちのスタイルを変えてしまえば、それこそここで『富春館』を続ける意味はありません。今では、ひとえに、自分たちのスタイルを受け入れてくださり、その輪を広げて下さったお客様と、一生懸命ついてきてくれたスタッフ達に感謝をしています。徐々にではありましたが、カフェだけでは手狭になり、その後、大正時代の西洋館を改装しレストランとしてオープンしたり、カフェやレストランでご提供させていただくお菓子や食品類、こだわりの調味料を販売するようなお店をオープンしたり、さらに、地方発送できるようなシステムを取り入れたりと、少しずつお客様のリクエストに応えながら歩み、現在の形に至りました」
Q:これからの目標を聞かせてください。
「ここに訪れてくれた方々が、古き良き時代と現代の文化が織りなす新感覚の空間を感じることで、ホッとしたり、明日からの活力をおぎなってくれたりできるような場所でありつづけられるよう、自分たちのスタイルを貫き日々丁寧磨き続けることが大切だと思っています。そして、そんな『富春館』の活動に興味をもち、この戸次エリアにいろいろなお店や活動家があつまり、昔に栄えたようなにぎやかさが復活することを願っています」
お忙しい中、ありがとうございました。