五ヶ瀬町の釜炒り茶『宮崎茶房』
農薬、化学肥料一切なし!天皇杯にも選ばれたこだわりのお茶!
いつも美味しい食べ物の話題で盛り上がっているパワナビグルメコーナーですが、たまには、「食べる」ことに欠かす事のできない、私達のものすごく身近にある「お茶」について触れてみたいと思います。まずは文部省唱歌である「茶摘 (ちゃつみ)」の歌詞を思い出してください。
「一・夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘みじゃないか 茜襷に菅の笠」「二・日和つづきの今日此の頃を 心のどかに摘みつつ歌ふ 摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ 摘まにや日本の茶にならぬ」
いいですね〜・・・日本のふるさとの風景が瞼に浮かびますよね♪みなさんも小学校の頃、一度は歌ったことがあるのではないでしょうか?梅雨入りをしてしま い、なんとなくどっちつかづの天気が続く宮崎ですが、初夏といえば「茶摘みの季節」です。そして、現代においても、どんなシーンにでもさりげなく、空気の ように溶け込み老若男女を問わず日本人が大好きな飲み物といえば、やっぱりお茶でしょう。県内でも都城市、川南町、五ヶ瀬町、高千穂町にお茶所があります よね! 最近は、日本も海外も日本茶ブームです。コンビニエンスストアから自動販売機まで日本茶のペットボトルの種類もかなり増えました……。
ところで、みなさんが飲んでいるお茶の種類は何ですか?煎茶?それとも、釜炒り茶でしょうか?私達のまわりにはいつでもお茶が存在します、あまりに近すぎて、知っているようで知らないことが意外と多いのも事実ではないでしょうか? 全国的に飲まれているお茶はどちらかといえば「煎茶」で、日本で飲まれるお茶の75%以上のシェアなんだそうです。ちなみに都城市や、川南町で主に作られているお茶は主に「煎茶」で、一方、宮崎県北地区にあたる五ヶ瀬町、高千穂町、日之影町は、全国有数の釜炒り茶の名産地として知られているのです。とにかく県内全域でお茶づくりは盛んなわけです。ここで、知らない方のために、「煎茶」と「釜炒り茶」の違いを簡単に説明すると、製品にするときの製造過程に違いがあります。釜炒り茶は‘‘炒る‘‘、煎茶は‘‘蒸す‘‘という違いです。緑色の濃い「煎茶」に比べて、「釜炒り茶」は透明の爽やかな黄金色。煎茶は‘‘味‘‘を、釜炒り茶は‘‘香り‘‘を楽しむお茶であるということが言えます。烏龍茶などの中国茶もまた、釜炒り茶と製法が似ていて、本物の烏龍茶の香りは、ペットボトルのそれとは比べ物にはなりません。まあ、ひとえにお茶と言っても、もちろんここで語りつくせるわけもないのですが、とにかく今回は、「夕日の里」としても有名な、五ヶ瀬町の桑の内地区にあり、農薬・化学肥料一切なしで、お茶の栽培から販売(釜炒り茶、紅茶、烏龍茶)まで行なっている、農林水産大臣賞や天皇杯にも選ばれた、こだわりのお茶づくりをされている、「宮崎茶房」 (社長・宮崎亮さん)に伺い、お茶摘みをはじめ、その作業風景や、お茶づくりに関する苦労話などを伺ってきましたので、どうぞ最後までお付き合いください!
(レポート:藤木テツロー)
宮崎茶房
住所:宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町大字桑の内4966
電話:0982-82-0211
FAX:0982-82-0316
宮崎茶房周辺マップ
天皇杯、農林水産大臣賞を受賞!農薬、化学肥料一切なしのお茶☆
「宮崎茶房」のお茶は、農薬、化学肥料一切なしのお茶で、過去に、農林水産大臣賞を受賞し、なんと、お茶に限らずさまざまな630部門の中から、7部門だけ選ばれる、天皇杯という最高峰の賞を受賞しています。商品の種類は10種類以上、釜入り茶はもちろんのこと、紅茶、烏龍茶、しょうがやハーブ、柚子が入ったお茶などたくさんあります。
▲農薬、化学肥料一切なし!天皇杯にも選ばれたこだわりのお茶を作る
「宮崎茶房」の一番茶の摘み取りも五月中旬から始まっていて、お茶摘み班も、工場班も、朝早くから夜遅くまで、連日連夜でフル稼働の大忙し。今がまさに最盛期です。一本の茶の木から一番茶、番茶、二番茶と収穫することができ、なんと、紅茶も烏龍茶も同じ茶の葉を使って作られるんです。ちなみに、釜炒り茶にしろ、煎茶にしろ、生葉の発酵を殺すために、炒ったり蒸したりしているのですが、紅茶は、生葉を完全に発酵させたのちに作られます。烏龍茶は、半発酵。お茶の世界は深いですね〜。味、香り、飲めば心を豊かにしてくれます。
宮崎県と熊本県と大分県の県境にある、五ヶ瀬町。標高600mから、700mに広がる茶園は、80年前ほど前に京都の宇治から持ってきた種から発芽させた実生の木であったり、もともと五ヶ瀬の山に生えていた自生の木であったりと、生命力と歴史に満ち溢れたものです。
茶摘み機は、3人一組で、二人が機械を持ち、もう一人が後ろで茶が入ってくる袋を持ちます。山間部で、平らな畑が少ない五ヶ瀬では、機械の大型化は難しく、人力(一人ひとりの労働力)を合わせて茶摘みをします。けっこうな重労働ですが、緑の中で黙々と働いています。
生葉に熱を加えたり、圧を加えたり、揉んだりして、水分を適度に飛ばして乾かし、茶の形を整えるために、ふるいで分けたり、切ったりして、私たちが飲むお茶となります。その日の天候、時間、茶の木の種類、生育具合、そのほか諸々の条件を考えて、手触り、香りなどで、工場の機械を調節していきます。工場長である、亮さんのお母さんのれいこさんは、小まめに茶の葉を触ったり、嗅いだりして機械の調整をしていました。長年の経験、熟練の技で、宮崎茶房のお茶は出来上がっていきます。
宮崎茶房の社長である、宮崎亮さんの祖母にあたる「里ばあちゃん」は、大正六年生まれの九十一歳。昔は木炭や、水車を使ってお茶作りをしていたそうで、里ばあちゃんも80歳位までは、亮さんたちと茶摘みの仕事をしていたそうです。「足が悪くなってようせんなった」って言っていましたが、この日も二時間、かるいをからって手で茶摘みをしていました。
▲左:里ばあちゃん
桑の内には一年中草取りをしている、おばあちゃんたちの草取り部隊があります。
亮さん曰く、「恐ろしいですよ本当に」。という働きぶり。お茶を機械で摘む前には、草を取っておかねばなりません。草取り部隊のおばあちゃんたちは、果敢に茶の木と木の間の通り道に体をいれ、草をかたっぱしから取りながら進んでいきます。五ヶ瀬の婆ちゃんは元気な人が多いです。ひい婆ちゃんも元気です。
うさぎを捕まえたり、雉の卵を見つけたりできるのは、さすが五ヶ瀬です。
工場を二人で切り盛りする、宮崎社長のお母さんと、お父さん。
宮崎亮社長のお話
▲宮崎亮社長
Q:宮崎茶房の釜炒り茶は、どういうお茶ですか?
「宮崎茶房の釜入り茶は、生葉の香りがそのまま出るような作り方をしています。ドロッとしたお茶ではなくて、サッパリしたお茶です。五ヶ瀬は、寒暖の差がかなりあるじゃないですか、夜は寒くて昼は暖い。それで夜の間、葉っぱが呼吸をしなくて、糖の消耗が少なくていい香りをだすそうなんです。平地のお茶と比べて、とてもいい香りがすると言われますね」
Q:お茶の栽培や、販売で、大変なことはありますか?
「五ヶ瀬町も高齢化が進んでいるので、僕のとこに「うちの茶畑もやってくれ〜」って、じーちゃん、ばあちゃんが言って来ますよね。本当に十年もしたら、かなり荒れた茶園も出てくると思います。宮崎茶房の茶畑は9ヘクタールあり、無農薬、化学肥料無しの有機栽培でやっていますが、栽培面では草の処理が大変っちゅうのと、虫が出たらかゆいし、手で潰さにゃいかんし、病気が出たら収量が減るし、そういうことが大変ですね。販売面では、自分たちはこだわっ作っているけど、なかなか(お客さんに)理解されないところもあるしですしね、それが難しいところです」
Q:宮崎茶房のPRをして下さい!
「宮崎茶房では、釜炒り茶、紅茶、烏龍茶を作っているんですけど、飲んだら元気になるようなお茶を目指して、みんなで楽しく頑張っています!」
パワナビ藤木テツロー談
いや〜!五ヶ瀬町の桑の内、凄くきれいな所です!阿蘇山が見え、五ヶ瀬の山々が見え、茶畑が広がっています。
僕もお茶摘みの仕事を手伝わせてもらったのですが、思った以上に大変でした。お茶の葉、一枚一枚は軽くても束になったら重いです。雨が降れば何もかも濡れて重さはさらに倍増。お茶畑は桑の内地区を中心に、その他の地区にもありますが、山間部にある五ヶ瀬町なだけに、ほとんどの茶園が傾斜のきつい山の中です。よくこんなところに茶畑作ったな〜というところも多いです。
そういうところで、初夏から夏にかけて、朝から晩までの茶摘みが毎日続きます。その上、多忙な茶摘みの時期にもかかわらず、社長の亮さんは、PTAの会合や、消防団など、地区の仕事もこなしています。少子高齢化が進む山村では、自分のことだけやっとけばいいというわけにはいかないのです。当然、地域のために仕事も頑張るという意識も生まれ、おじいさん、おばあさんがやれなくなった茶畑も引き受けてやっているのです。
亮さんが23歳の頃に帰郷しはじめた頃は、3ヘクタールだった茶畑が、今では3倍の9ヘクタール。一度荒らしてしまうと、元に戻すのには更なる苦労がいるそうです。しかも、手間隙のかかる有機農法に取り組んでいるのをみると、頭の下がる思いがしました。
受賞された天皇杯というのも、ただ、製品が良ければ贈られるというわけではなく、地域貢献なども考慮されるそうです。桑の内のお茶作りは、草取りのおばあさんなど、地域の人が繋がってお茶作りがされているのだな〜と思いました。
お湯をいれれば香りたつ、五ヶ瀬町の釜炒り茶は贅沢な一杯です。憂鬱な梅雨のひと時に、五ヶ瀬の釜炒り茶で心も体もリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。