のべおかんシアター『蛍の頃』
延岡市出身の本田誠人(劇団ペテカン)脚本・演出~のべおかんシアター『蛍の頃』
2010年2月5日から7日にかけて、「延岡市総合文化センター小ホール」にて、延岡市出身の本田誠人さん(劇団ペテカン)が脚本・演出を手がけた舞台、『のべおかんシアター・蛍の頃』が上演されました。
この『蛍の頃』は、もともと東京の老舗劇団「テアトル・エコー」での上演のために、本田さんがご自身の体験を基に書き下ろした作品なのですが、今回の延岡公演のために、2009年4月にキャストを地元から募集、その後、ワークショップ・オーディション、台本の読み合わせ、さらに本田さん指導のもと稽古を積み重ね完成した、地元の人々と共に創りあげた、東京では観ることのできない「延岡限定バージョン」なのです。
ちなみに『蛍の頃』の内容は、「昭和30年代の延岡。キャバレー”シスター”のママ絹子とそこで働く女たち。時代が変わりゆく中で生きぬく人々を現在を絡めて笑いとともに描く。至上の”本田的ノスタルジック・コメディ!(パンフレットより)」という、延岡人が楽しめる内容の舞台であることから、チケットの前売り開始前から話題を呼び、三日間・3公演の前売りチケットが完売するだけでなく、さらに追加公演のチケットも発売から間もなく即完売となり、結果的には三日間・4回の総観客数は約1,200人を記録するほどになりました。
そこで今回は、脚本・演出を手がけた本田誠人さんに、作品の見所や、地元延岡での公演に関する感想などをお聞きすると共に、公演初日の舞台の模様を併せてご紹介したいと思います。
(レポート:松田秀人、甲斐英利)
のべおかんシアター『蛍の頃』
会場:延岡市総合文化センター・小ホール
URL:http://www.nobeoka-bunka.com
公演日:2010年2月5日、6日、7日
キャスト・スタッフ紹介
脚本・演出
本田誠人(ペテカン)
キャスト
→現在
俊明……山田げんごろう(劇団すいとどうかにち)
絹子……濱崎けい子(二人の会・客演)
笹井……桃山なおき(劇団すいとどうかにち)
→昭和30年代
若い頃の絹子……西川優子(劇団ハック)
喜一郎……岩切義樹(門川!こふく劇場)
静江……樋口千穂(SALAエンターテイメントアカデミー)
美知代……松本みさと(劇団すいとどうかにち)
のり子……長埜恵生子(劇団ハック)
小雪……鵜濱咲紀(劇団ハック)
慎二……田中祥吾(SALAエンターテイメントアカデミー)
入船……誉田健次(門川!こふく劇場)
戸田……木下 龍(SALAエンターテイメントアカデミー)
酔っ払い……濱田龍司(ペテカン・客演)
スタッフ
舞台監督・演出助手:濱田龍司(ペテカン・客演)
舞台美術:遠田芳章(とおだ工房)
照明:工藤真一(ユニークブレーン)
音響:日高祐一(ユニークブレーン)
音楽:佐藤みえこ
演出部:谷 友彦、中平真那美
アナウンス:東国原英夫(宮崎県知事)
制作協力:クリオネ、テアトル・エコー、オムプロモーション、ペテカン、市川よしあき
企画・制作:延岡総合文化センター
会場周辺マップ
脚本・演出~本田誠人(劇団ペテカン)
本田誠人プロフィール
1974年、宮崎県延岡市生まれ。172cm B型。延岡西高時代に「ダウンタウンの全九州お笑い選手権」でグランプリを取る。1995年に「劇団ペテカン」を旗揚げ。その後、役者として舞台を中心に、CX「電車男」、NHK「ハゲタカ」等のテレビドラマや、映画、CM等にも多数出演。近年では役者としてだけでなく、舞台・ドラマ・ラジオなどの脚本や演出も手がけている。
※劇団ペテカン公式ホームページ↓
URL:http://www.petekan.com
※テアトルエコー公式ホームページ↓
URL:http://www.t-echo.co.jp
本田誠人ショートインタビュー
Q:作品の舞台は昭和30年代の延岡なんですよね。
この『蛍の頃』は昨年1月に東京のテアトル・エコーに書き下ろした作品で、もともと東京で上演されていたものです。内容が僕の実体験をベースにした、昭和30年代の延岡を舞台に繰り広げられる物語だけに、今回は里帰りといった感じですかね?この作品を作った時はまさか延岡で上演できるとは思わなかったので、故郷である延岡で、それも地元の役者陣の力をかりて上演できるということは、僕にとっては本当に嬉しいことです」
Q:作品の見所は?
「なんといっても、延岡の人が見てこそ一番面白いというのが作品の一番の見所だと思います。だからこそ、さらにディテールを練り上げてきました。当時のアヅマヤデパートの紙袋を再現したり、リアルな延岡弁、さらに地元を感じさせる名称や表現がたくさんでてきますから注目してください!また昭和30年代を体験されている方は、キャバレーの一室での何気ない会話の中から、古き良き延岡を思い出してくだされば嬉しいです」
Q:本田さんご自身の今後の活動予定をお聞かせください。
「今年は4月に東京で2本脚本提供の仕事があり、また10月にはペテカンの舞台もあります。さらにこれは希望ですが、夏くらいには、木村拓哉さん主演のドラマに出たいな~なんて思ってます(笑)。ここ強調でお願いしますね!」
Q:地元の方々へメッセージをお願いします。
「お芝居というと、同じエンターテイメントでも映画や音楽と比べ、なんとなく敷居が高いイメージがあったり、有名人や知り合いが出てないと見に行かないなどがあると思うのですが、今回『蛍の頃』のチケットが、追加公演を含め全て完売というこのひとつの奇跡が、今後の延岡の演劇のさらなる底上げになると良いなと思います。そして演劇に携わる者として、演劇が延岡の皆さんにもっと身近な存在になれば良いと思うし、それだけでなく、そうなれるよう今後も延岡で、そして東京でもいい舞台をしていきたいと思います」
会場風景
会場となった「延岡市総合文化センター」には、開場前からたくさんの観客がつめかていました。三日間の公演のチケットが全て完売し、さらに追加公演分までがすぐに売り切れてしまったという人気のほどがよくわかります。
さすがに本田さんの地元だけあって、会場に並ぶ花輪も多く、本田さんにとって懐かしさを感じるであろう名前がずらりと並んでいました。
蛍の頃~舞台風景
▲現代の延岡。絹子の息子俊明は、会社をクビになり、離婚をし、帰郷している。
▲母・絹子の認知症を心配し、共に病院に足を運ぶ俊明。ここから物語が始まる。
▲絹子は俊明に思い出話を語りはじめる。
▲昭和30年代。キャバレー”シスター”を切り盛りする若かりし絹子(右)。
▲大きな店ではないが、みんな明るく働いている。
▲絹子の夫で”シスター”のマスター喜一郎は店をほっぽり出し、
▲ライバル店のホステスに熱をあげたりしているが、
▲結局、絹子がいなければなにもできないし、
▲東京からやってきた新人の小雪(右から二番目)は、
▲”シスター”のアイドル的存在でありながらバーテンと恋に落ちてしまったり、
▲小さな問題はあるものの、
▲何もかもがそれなりにうまくいっていた。
▲風変わりな家族だが、俊明は個性豊かな人々に囲まれ育った。
▲そんなある日”シスター”に刑事が乗り込んでくる。
▲ホステス達の不祥事を問いただされる喜一郎。
▲「そんなつもりではなかった……」
▲時代に翻弄されるホステス達。
▲仲間達との別れ……。
▲さらに俊明も都会へ旅立った。
▲度重なる別れに途方に暮れる絹子と喜一郎。
▲しかし人々の思惑に関係なく時代は流れていく。
▲それでも”シスター”の従業員達は明るく生きつづける。
▲そして人生に疲れ果てた俊明がなにもかもを理解したとき……。
お疲れさまでした!
初日の舞台は大成功!満員の会場からは大きな拍手と歓声があがりました。
脚本・演習を手がけた本田さんも、確かな手応えを掴んだと同時に、地元の人々に感謝の言葉を熱く語っていました。
幕が上がる前は緊張の面持ちだった出演者達も、初日の舞台を終え、観客の反応を体感したことで、思わず笑顔がこぼれていました。
初日の上演を見終わった後で強く感じたのは、故郷延岡と芝居に対する本田さんの強い愛情でした。その気持ちが地元の役者陣に伝わり、大きな熱の塊となって観る者をも包み込む素敵な作品です。そうした作品の持つ体温は何日もかけて練り上げられるものだと思います。なんといっても、映画やドラマと違い、舞台は一発勝負でやり直しがきかないので、役者達の気合いの入れ方もまったく異なります。ある意味観る側としては「真剣勝負」に立ち会っているような見方もできます。だからこそ「作品の熱」を感じるには、やはり生の舞台を体感しないと意味がありません。
今回の『蛍の頃』は人気の作品だっただけに、きっとチケットが手に入らず悔しい思いをされた方も多かった事でしょう。できれば今回見逃してしまった多くの方のために、またいつかこの延岡の地で再上演していただけると嬉しいです。そして本田さんがおっしゃっているように、この延岡でもたくさんの素晴らしい舞台作品が観られるようになればいいと思います。