レストラン みづひき
自然の恵みを五感で感じることができる無国籍レストラン『みづひき』
今回のグルメレポートは、「九州のグランドキャニオン」というキャッチフレーズでお馴染みの『蘇陽峡』がある熊本県は山都町より、自然の恵みを五感で感じることができるレストラン『みづひき』さんをご紹介します。
山都町の美しい風景と、草木の生命力が溢れるこの土地に魅了された女性オーナーの手により、2003年にオープンされたこちらの店舗は、小林市・西米良村・椎葉村・五ヶ瀬町・山都町・高森町・阿蘇市といった、南九州から中央九州の山間部を横断する『国道265号線』沿いに位置することから、誰もが容易に目にとめることができない、まるで物語の中に出てくるようなレストランです。
しかし店舗をはじめ、その周辺の空間には言葉では言い表すことのできない、人と自然が織り成す心地よいパワーが溢れ、丘を流れる風を感じながら、地元の野菜をふんだんに使った、添加物不使用の手作り料理を食べていると、「癒される」というだけでなく「たっぷりと元気をもらえる」実感が体の中からわいてきます。
そんなことから少しづつ、口コミで情報が県内外へと広がり、今ではリピーターの多くが遠方からの方々という状況になっているそうです。中には噂を聞きつけ、わざわざ東京から足を運ばれてくることもあるそうです。
さて「どんなに時間をかけてでもたどり着きたい」」と思わせてしまうレストランとは、いったいどのような場所にあり、いったい誰がどんな想いをこめて造ったのでしょうか?そして地下120mからくみ上げた良水を使ってつくられる、添加物不使用の料理の味は……?それではさっそくレポートをはじめたいと思います。
(レポート:松田秀人)
レストラン みづひき
住所:熊本県上益城郡山都町塩原942-2
電話:0967-83-0234
営業時間:11:30~17:00(OS)
定休日:火曜定休(祝日は営業)
駐車場:あり
URL:http://mizuhiki.petit.cc/
道案内
今回はスタートが延岡市内だったので、まず国道218号線を高千穂町から五ヶ瀬町方面に進むことになりました。道中は山間部を通ることが多いため、一見複雑に感じるかもしれませんが、ルートはいたって簡単です。
まず国道218号線を熊本を目指してひたすら進み、途中、五ヶ瀬町役場の前を過ぎ、国道265号線と交わる『山都町馬見原交差点』を五ヶ瀬ハイランドスキー場・椎葉町方面には左折せず、そのまま次の信号の『山都町滝上交差点』を国道265号線『阿蘇』『そよ風パーク』方面に右折し、しばらく行くと右手方向に『みづひき』さんが見えます。
▲国道218号線を高千穂町から五ヶ瀬町方面へ。
▲五ヶ瀬町役場前を抜けると、右に『うのこの滝』への誘導表示があります。
▲せっかくだから『うのこの滝』へ寄り道することにしました。
▲『うのこの滝』(五ヶ瀬町)。落差20m、滝壺の大きさ5,000㎡。山中にあいた巨大な穴のような印象が特徴。
▲来た道をもどり、ふたたび国道218号線を熊本県山都町方面に進みます。
▲『山都町馬見原交差点』(右画像)を椎葉町方面に左折せず、まっすぐ進みます。
▲すぐ次の信号『山都町滝上交差点』(右画像)を国道265号線方面に右折します。
▲国道265号線を『阿蘇』『そよ風パーク』方面に進むと、やがて右に店舗看板が見えます。
▲店舗手前の小さな坂を下ると広い駐車場があります。
▲駐車場から店舗を見上げて、右手方向に店舗入り口に続く石段があります。
店舗周辺マップ
店舗紹介
店舗がオープンしたのは2003年。今年の7月25日で6周年(記念イベント情報下記参照)を迎えるそうです。
とにかくオーナーご自身がこの土地に愛着を持ち、わざわざ大阪から山都町に移住をしてまで造りあげている店舗だけに、駐車場の立ち木からトイレの隅に至るまで、しっかりとオーナーの心と愛情が行き届いているのが印象的です。
自然に囲まれた店舗まわり
店舗看板のすぐ手前には広々とした駐車場に繋がる小さな下り坂があり、駐車場の奥には店舗入り口に繋がる石の階段があります。石段の脇には、ソースとして使用される『ブルーベリーの実』などを見る事ができます。
駐車場のまわりには、たくさんの草花や存在感のある個性的な石たちが、車でやってきたお客さんを出迎えるように囲んでいます。また聞くところによれば、駐車場にある大きな立ち木なども、どこかの森で捨てられそうになったものを、オーナーが自ら引き取って植え替えたりしているそうです。
ちなみに、店舗への入り口は国道側からもあるのですが、できれば駐車場側にある石段をご利用ください。何故なら、そのほうが何倍も気持ちがいいからです。
店舗のまわりにあるテラス席には、大木から切り出されたままの姿をしたテーブルが並んでいます。これらは全てオーナーが自分で気に入った木を選んでテーブルに造り変えてもらっているそうです。テーブルの表面にまで凸凹感があるのがリアルです。
もちろんテラスからの眺めも最高ですが、なんといっても素敵なのは、店舗の周辺の草木が臭い立つように感じられることです。もともとこの土地には何もなかったそうなのですが、こうした景観を自然の持ち味をそこねることなく整備していけるオーナーの感性には驚かされます。そんなことから、晴れた日だけでなく、草木が喜ぶ雨の日などは特に、自然のエネルギーをたくさん吸収することができるでしょう。
赤を基調とした空間が印象的な店内!
店舗内は、オーナーが特に好きだと言われる、赤が基調となっており、各テーブルの脇には、気軽にテラスに出られるほど大きな窓が設置されています。
また店舗外観からはちょっと想像できないくらい天井が高いのも特徴的です。中でもトイレに関しては「日本一きれいなトイレを常に心がけています」という言葉どおり、ピッカピカでした。
2F 石の音(いしのね)~ Natural Stones and Accessories ~
店舗内にある階段を二階へ上がると、そこは一階とは趣が異なる「パワーストーン」の世界が広がっています。特にオーナーが興味をもたれてコーナーを開設されていることから、一階でお食事をされた後で二階に上がり、石にまつわる様々なお話をされていくお客様も多いそうです。
こころが癒されるアイテムがいっぱい!
また店舗のあちこちにある置物を見てまわるだけでも楽しいので、インテリアや雑貨好きの方にとってはそのへんもたまらない魅力かもしれません。
無添加の手作り料理
野菜カレー 980円
ゴロっと存在感のある大きな野菜たちが印象的な『野菜カレー』。本場インドの香辛料(下画像)を使用し、小麦粉を使わずに15種類の野菜を入れ4時間かけてスープを造り、たまねぎを4時間炒め、最後に5時間煮込こみ(合計13~14時間)、体によいターメリックライスと一緒にいただく『みづひき』特性のカレーです。
合計14時間もかかってつくり込んでいるとのことですが、このカレーにかかっている手間はそれだけではありません。ひとつひとつの大きな野菜が、カレー味にどっぷり浸かることなく、それぞれの持つうま味がしっかりと伝わるように、野菜単体でも美味しくいただけるような味付けをし、それを後のせしているのです。
基本的には切れのある刺激的な辛さが特徴的な大人のカレーですが、野菜の甘味が辛さを包み込んでいるため、辛いのにもかかわらず、どんどん口に運んでしまえる不思議なカレーです。ちなみに私は辛さのわりに、一度も水を飲みませんでした。
全体的に「しっかりとつくりこまれた女性ならではの上品なカレー」といった印象をうけましたが、できれば本格的なカレーマニアの男性にも、ぜひ味わっていただきたいです。
アマトリチャーナ 880円
パスタは本場イタリアのディチェコパスタを使用。地元産のトマトを使い『みづひき』オリジナルソースをつくり、イタリアバージンオイル、パルメザンチーズで仕上げました。
ソースと絡みやすいといわれるディチェコパスタを使用しているだけに、オリジナルトマトソースの味がストレートに伝わってきました。
トマト特有の自然な酸味が損なわれることなく、後味の中にほのかな甘味をしっかりと感じたので、ソースについて詳しく聞いてみたところ、「実は自然で嫌味のない甘味を出すために、甘味の強い地元産プチトマトをブレンドして味を調えているんですよ」とのことでした。その話を聞いて、是非他のパスタも食べてみたくなりました。
ケーキセット 880円
お持ち帰り商品としても好評な、ふんわりと焼き上げた『シフォンケーキ』に、自家栽培のブルーベリーでつくる、『特性ブルーベリージャム・バニラアイスクリーム』に『ダッチコーヒー』がセットになった、カフェタイムにおすすめのメニュー。
まずはお持ち帰り用の大きなシフォンケーキの4分の1ほどもあろうかという、その大きさに圧倒されてしまいます。さらにその横に盛られた、バニラアイスクリームも大盛り。これだけの量があれば、フワフワのシフォンケーキにブルーベリージャムとバニラアイスクリームを絡めて食べたり、それぞれの味を確かめたり、いろいろ楽しめるから大満足間違い無しではないでしょうか?
ちなみにこの日は、きれいな桜色をしたジャムが別に盛られており、その上品で清々しい味と、またその色からは想像できないリンゴ風味にびっくりして、おもわず「これはいったい何のジャムですか?」とたずねたところ、「まさにリンゴジャムで、この桜色は紅玉(こうぎょく)という種類のリンゴからしか出せないんですよ」と教えてくれました。
このジャムまで合わせれば、たった一皿で味のバリエーションがかなり広がり、楽しみも倍増します。
ダッチコーヒー 450円
有機栽培のコーヒー豆を使用し、地下120mからくみ上げた良水で、8時間かけて仕上げた『みづひき』こだわりの、まろやかで香り高いコーヒーです。
これはとても飲みやすいコーヒーです。特にブラックで飲むと、そのまろやかさがわかると思います。コーヒー特有の酸味は苦手だけど、深みのあるコクや、香ばしいかおりは捨てがたいという方にはピッタリだと思います。
もちろん『みずひき』さんで使用される水は、ダッチコーヒー同様に地下水が使用されています。
おしぼり
メニューとはちょっと違うのですが、『みづひき』さんのおしぼりからはいい香りがします。それは何故かといえば、おしぼりに『青森産ひば油』が染み込んでいるからです。この『ひば油』は、100kgの『ひば材木』からわずか1kgしか抽出出来ない貴重な物で、天然の抗菌消臭効果だけでなく、肌にうるおいをあたえる効果もあるという優れものなのです。ちょっとしたことではありますが、こんな心づかいがうれしいですよね。
その他のメニュー紹介
※下記はメニューの一部です。
手作りのアルバムのようなメニューに描かれたイラストが印象的だったので、メニューの一部をイラストと共に紹介させていただきます。
▲アルバムのような手作りメニュー。
▲左:きのこ(880円) 右:めんたいこ(880円)
▲左:オムライス(980円) 右:野菜グラタン(880円)
▲左:ドリア(980円) 右:かぼちゃスープ(450円)
▲左:ガーリックトースト(300円) 右:コーヒーゼリー(450円)
スタッフ紹介
▲スタッフのみなさん、中央がひぐちくみこオーナー
ひぐちくみこオーナー
「大阪時代に営業で全国各地をまわりました。そして様々なスタイルの素敵なお店に出会いました。そうしたお店で私が感じた気持ちいい部分が断片的に頭の片 隅に残っていて、それを全部繋ぎ合わせて出来上がったのがこの『みづひき』です。私は常に、空間づくりも、料理も、トイレの清掃も、やるからには徹底して やりたいから、これで終わりというものはありません。この『みづひき』もまだまだ進化途中ですし、遠方から何度も足を運んでくださる皆様のためにも、毎回 新しい気づきを感じていただき、自然のパワーを持ち帰っていただけるよう、これからもスタッフと共に努力していきたいと思います」
店名はこの地に群生していた『水引草』からとったもの!
店舗の名前となっている『みづひき』は、もともとこの場所にたくさん群生していた『水引草』から名づけられたそうです。
以前「ひぐちくみこ」オーナーは大阪で会社を経営されており、はじめは旅行で何度も大阪から熊本に足を運ばれていましたが、次第にこの山都町に魅かれ、気がつけば月一回やってくるようになってしまったそうです。ひぐちオーナーいわく「土地によばれているという感覚があった」ことから、かれこれ10年近く通い続けてしまったとのことです。
店舗オープンに至る直接的な理由としては、通い続けているうちに友人が増え、集まって食事などをすることが多くなったので、「それじゃ友人達が気軽に集まれる心地よい小屋をつくり、どうせならコーヒーやお菓子ぐらいは手づくりして楽しみたいね!」とはじまったちょっとした企画でした。しかし、はまり込んで手をかけていくうちにどんどん拡大し、今のような店舗になってしまったそうなのです。
当初は、大阪の会社の経営のこともあったため、大阪と熊本を行ったり来たりし、何かとバタバタしてしまい、店舗づくりに中々専念できなかったそうですが、あまりに山都の地に肩入れしている「ひぐちオーナー」を見かねた娘さんが「そんなに好きなら会社は私がどうにかするから移住して思いっきりやってみれば」と言ってくれたことがきっかけとなり、現在は会社経営を娘さんにゆだね、移住されたそうです。
いかがでしたか?こうしてざっとながめただけでも、店舗の隅から隅に至るまで、ひぐちオーナーの思い入れや愛情が浸透しているのが伝わってきますよね。美しい自然に囲まれているでけでなく、それに負けないぐらい、人の心がそそぎこまれているからこそ、ただ癒されるだけでなく、自然から、人から、食べ物から、たくさんの良質なエネルギーがもらえ、元気になれるのだと思います。
そういえば、ひぐちオーナーが「晴れた日もいいですが、雨の日もとても素敵ですよ」と言っていたので、今度はあえて雨の日に足を運んでみたいと思います。