Life design shop Areas(エリアス)
日田市に息づく伝統文化と職人技を独創的な発想で結びつけ、オリジナル商品を企画・プロデュース。さらに、国内外から厳選したアイテムを合わせて”生活をトータルでデザイン”する、家具・雑貨販売&カフェ『Life design shop Areas(エリアス)』
大分県日田市は、江戸時代の”天領地”として知られ、中でも『豆田町』は幕府御用達の商家が集中していたこともあり、今でも大分県内最古の商家や蔵屋敷が建ち並ぶことから「九州の小京都」と称されています。
そんな豆田町にある古民家を改装し、「日常生活のトータルデザインを提案」をテーマに、独自にセレクトした雑貨をはじめ、日田市に息づく伝統工芸技術などの文化を独創的な発想で結びつけ新たな商品を企画・プロデュースしたり、日田杉を使用して商品開発を進めるプロジェクトを立ち上げるなど、地域との関わりを大切にしつつ展開しているのが『Life design shop Areas(エリアス)』です。
「家具の世界に魅了されたのはデザインを学んでした大学時代でした」と語るオーナーの仙崎雅彦さん(北九州市出身)。本格的に家具を手がけたいとの思いからルーツを辿って日田家具に出会い16年ほど前に移住。豊かな自然とともに共存してきた先人たちの知恵が詰まった日田市独特の「ものづくり」文化と技術を目の当たりにし、その文化・技術を今の時代に求められる新たなスタイルへと進化させながら、伝統を発信しつつ後世に継承していきたいと考えるようになり、2009年にお店をオープンしたとの事。店内には、仙崎オーナーがスタートしたプロジェクトによってうまれた作品の数々や、ものづくりのエキスパート達が手がけた「技あり!」の雑貨がずらりと並べられています。
(レポート:中本望美)
Life design shop Areas(エリアス)
住所:大分県日田市豆田町7-20
電話:050-1048-7757
URL:http://www.hi-count.net/
店舗周辺の風景と地図
▲国道212号線を豆田町方面へ曲がり、まっすぐ進むとメイン通りの「上町通り」につながりますが、西側の「御幸橋」を軸に進むと分かりやすいかと思います。
▲御幸橋を豆田町中心へ向かって渡り、そのまま真っ直ぐ進みます。
▲1区画目を左折し、数メートル進むと右手に看板があります。
▲Areasのロゴが入った白い山切型のフラッグが目印♪
店舗紹介
歴史を感じさせる重厚感のある古民家を利用し、日田に伝わる伝統工芸品である「小鹿田焼」や、自然と共存することでうまれた家具作りの技術を活かしたオシャレなインテリア、そしてオーナーの仙崎さんがチョイスしたユニークでデザイン性の高い雑貨の数々がところ狭しと並んでいます。
中でも特に目を惹かれるのが、仙崎オーナープロデュースによる、日田杉の特色を活かしつつ伝統的な職人の技を盛り込んだ様々なオリジナル商品です。
正面入口から覗きこんだ時、店内に配置された家具に腰掛けた時の目線、店内奥から入り口を見渡した時の風景など、自然光と照明のリズムが気持よく変化し、見る角度により店内の表情ががらりと変わるのが印象的でした。
▲カウンターに立ちながら商品開発の思案をするオーナーの仙崎雅彦さん。日田が誇る『日田杉』をメインに商品開発・地域貢献活動をする『HITA SUGI プロジェクト』(後記「ピックアップ」で詳細記述)や、日田の伝統工芸を伝承するチームをつくるなど、ショップ運営をしていくことが、「ものづくり・伝統」の発信・伝承・進化を促進する場となっています。
カウンターの下に埋め込まれたショーケースとライティングが素敵です!
日本三大美林に数えられる日田の山から生産される『日田杉』を中心に開発されたソファーやペンダントライト、漆細工と合わせたコップやコースター、伝統工芸である小鹿田焼など、店内にそろう商品は「日田のものづくり技術」が活かされた「生活必需品」が豊富に揃っています。
ちなみに、日田杉の特徴としては、表面が硬くて中心が柔らかいため、細やかな加工がしやすいのだそう。
(後記にてピックアップ商品をご紹介します)
店舗の一番奥には、一枚板の立派なテーブルセットが置かれ、カフェスペースになっています。カップは店内でも販売されている『小鹿田焼』を使用し、コースターは日田杉で作られたAreasのオリジナル商品でカフェタイムを楽しむことができます♪ちなみにドリンクはテイクアウトもOK!
ピックアップアイテム
HITASUGI PROJECT(日田杉プロジェクト)でうまれた、ぬくもりあふれる雑貨たちや、ものづくりの技術をいかしたアイディア雑貨
HITASUGI PROJECT(日田杉プロジェクト)とは
大分県日田市で育まれた「日田杉」を活用することで、命の源である森を育て、循環バランスを守り、幅広い分野に伝えながら後世につなげていくという地域資源活用事業です。
「日田杉」をフィルムでコーティングした「杉シート」。そして、フィルムでコーティングされた「日田杉」や「日田檜」と布を張り合わせることにより、縫製を可能にした「木布(wood fabric)」。さらに、薄い「日田杉」を張り合わせた「簡易木皿」などを開発し、日田で活躍する伝統文化の職人たちとコラボレーションしながら様々な商品を生み出しています。
また、収益の一部を森の活動・木育活動への支援として活用されています。
▲祝儀袋1000円(別)(画像左)
「杉シート」を使用した祝儀袋。他とは違った新鮮な驚きも合わせてプレゼントできそう!短冊3枚・中袋1枚もセット。
▲ブックカバー サイズM/L 450円(別)/木のしおり200円(別)(画像右手前)
木布のブックカバー(日田スギ・日田ヒノキ) 2,700円(別)(画像右奥2つ)
「杉シート」をシンプルに折り曲げた文庫本サイズのブックカバーとしおり、そして木に布を貼り付けたオリジナルの「木布」を使用し、地元の縫製向上で作られたブックカバー。滑らかな手触りと温かみのある雰囲気で、より心静かな読書タイムを過ごせそう。
▲暗記帳280円(別)(画像左)/ウッドファイル450円(別)(画像右)
フィルムコーティングされた「杉シート」使用。持っているだけで注目の的になりそうです☆
▲銘木カード入れ(大) 4,000円(別)
元自動車メーカーのエンジニアだった日田出身・京都在住の58(合谷)さんがつくる一点もの。カードや名刺を入れて滑り落ちてこない”金具不使用”のストッパーや隙間の処理など、感嘆の声がもれそうなほどの細やかなワザが光っています!
▲杉アロマキット900円(別)
プロジェクトロゴの姿をしたパーツを立て、円の中心にオイルを直接染み込ませる組み立て式のアロマキット。自然に揮発する香りを楽しむので、火を使うこともなく安全!ボトルをセットするスペースもあるのでインテリアとしてもおすすめです☆
▲銘木カード入れ(小)2,500円(別)(画像左)
カードを入れても滑り落ちてこない仕掛けがされた”技あり”なケース。カードを足すも出すも滑らかな使い心地が特徴。木の表情が違うのでデザインはすべて一点もの!
▲ウッドスタンド1,000円(別)(画像右)
カップに仕切りを入れることでペン立てやアクセサリーのディスプレイスペースに早変わり!
てる坊・わる坊シリーズ
仙崎オーナーが発案した雨を楽しむアロマストラップからはじまり、アロマディフューザーや杉のうちわ、コースターやTシャツなどのファッションアイテム、さらにてる坊の家族キャラまで登場した人気にシリーズ。
▲てる坊ストラップ900円(別)(画像下段)・わる坊ストラップ1,200円(別)(画像上段)
仙崎オーナーが「こんなものあったらいいな〜」と閃いてすぐに商品となった、底穴に香りを染み込ませるタイプのアロマストラップ。傘の先に下げるとプラプラ揺れる”てるてる坊主”の可愛らしい姿と、好みの香りがうっとうしい雨を癒しのひとときに変えてくれますよ♪ちなみに、”わる坊”は、感情表現が苦手で”てる坊”と仲良くなりたいと思っているのだそう♪
▲ヒノキのてる坊
手前:てる坊のおにいちゃん 2,500円(別)/奥:てる坊のひなまつり 4,800円(別)
てる坊のお兄ちゃんは、頭の”つむじ”にアロマオイルや香水を染み込ませて香りを楽しめる天然のアロマディフューザーになっています!
▲てる坊・わる坊 杉うちわ 360円(別)
日田杉を薄く加工し、繊維の方向を交差させながら3枚を張り合わせたうちわ。使う度に天然の木の香りが漂い、さわやかな風を吹かせてくれます。
▲T-shirts キッズ80〜Lサイズ 2,800円(別)〜
サラリとした生地で着心地の良いてる坊・わる坊のTシャツ。親子おそろいで着ている方も多いのだとか♪
▲ウッドスリッパ 4,500円(別)(画像左)/仙崎オーナーが開発中のサボ(画像右)
いつでもフローリングの上にいるような室内用木製スリッパ。底に本革シートを貼り付けているので床板を傷つける心配もありません♪
”サボ”は、カラーや質感を厳選したフェルト生地を下駄に打ち付けたアイディア作品。つま先をやんわりと保護しながらオシャレな足元を演出してくれますよ!(こども下駄もあり!)
▲クラッチバッグ 12,000円(別)
HITASUGIプロジェクトで開発された”木布”と、個人アーティストがデザインした迷彩柄の布を張り合わせたクラッチバッグ!中は眩いほど鮮やかな朱色で、小ポケットも付いていて機能性もバツグンです☆
▲ゆらぎ 3,600円(別)
日田の漆職人と木工職人の技術を重ねあわせた”極み”の盃。何度も重ね塗られた内面の漆のカラーと木の模様の風合いが美しく、お酒を注ぐときにゆらぐ仕草が情緒的な逸品です。
▲絞丸太お猪口 1つ2,700円(別)/日田コースター700円(別)(画像左)/ウッドコースター1,800円(別)(画像右)
凹凸のある絞り丸太の年輪模様をいかし、日本酒の酒蔵で透明度を調べるために使われる”蛇の目おちょこ”を表現しています。
▲小鹿田焼のコーヒーカップ 1,600円(別)+ウッドソーサー1,800円(画像左)
小鹿田焼は江戸時代中期から続き、平成7年に国の重要無形民俗文化財に指定された伝統的な焼き物です。今もなお、一子相伝で一貫した手作業により伝統が守られています。その小鹿田焼とAreasが共同で開発した多様な作品が販売されています。ウッドソーサーはカップとセットで小さな小皿やお菓子がセットにできるスペースが実用的!
▲ボトルスタンド 2,200円(別)(画像右)
絶妙なバランスでボトルを支えるスタンドは、ワインキーパーとしても、空瓶のディスプレイにも重宝されます!
▲ポール3,800円(別)(画像左)
全て手加工で削り出された天然木のしゃもじ。一本のメープル材をベースに、ケヤキ・ブビンガ・ウエンジの天然色でストライプ模様をあしらったデザインと、場所に困らない自立する機能性に驚かされます。
▲菓子切り1,200円(別)
手にしっとりとなじむような絶妙なアーチ、「切る・刺す」という機能を考慮した刃先など、実用性を持たせた職人技にうっとりしてしまいます。
▲ヒノキ食卓プレート 3,600円(別)
大分県産ヒノキの一枚板に小鹿田焼の小皿をセットにした食卓プレート。底部分が欠き込んであるので持ち運びも簡単!ディスプレイのようにお惣菜のお寿司を乗せると、自宅でもお寿司屋さん気分ですね♪
▲箸月 600円(別)
天然の木の色をいかした月の形の箸置き。お箸を置くときにゆらゆら揺れる姿が可愛らしいですよ☆
杉玉ペンダントライト
日田杉を使用し球体を造り上げたペンダントライト。隙間の幅で明るさが調整出来る優れものです!光で透かされた木目とこぼれる光で優しい空間を演出してくれますよ♪
L:16,800円(別) M:12,000円(別) S:10,000円(別)
▲杉ペンダント 8,000円(別)
フィルムコーティングされた「杉シート」をラッパ状に巻きつけたペンダントライト。天然の木目と光が織り成すアートが幻想的です。
▲RUBBER M36 2,700円(別)
日田杉を使用したシブいゴム鉄砲!ケースは的として使用することができ、日田杉のグリップは取り外しが可能で自分なりのカスタマイズが楽しめます!このモデルは生産されないので、残りあとわずかな貴重品!
オーナーインタビュー 仙崎雅彦さん
自然と共存するためにうまれた日田の伝統・文化を支える職人技(ものづくり)を過去のものとせず、優れた作品を開発・発信することで、山や資源を守るといった「地域貢献」になる。その活動によって伝統文化を守り、さらに現代の様式に合わせた「文化の進化」につなげていきたい。
▲オーナーの仙崎雅彦さん。北九州市出身で、16年ほど前に日田へ移住。
Q:お店をオープンしたのはいつですか。
「2009年です。6年が経ちました」
Q:なぜ日田に移住を?
「大学でプロダクトデザインを学んでいるときに家具に魅了され、家具づくりのルーツを追求すると『日田』にたどり着きました。そしてある大手の日田家具メーカーに就職し、開発企画・デザインを担当していました。そんな中で、日田が自然と共に生きてきた先人たちの知恵をいかし、家具や漆、焼き物など『ものづくり』を追求する職人さん方に出会いました。その匠の技に触れる度に、自分が思い描くような家具作りだけでなく、その職人技を活かした活動がしたいと思い、日田で独立しました」
Q:ショップをオープンしようと思ったきっかけは。
「日田には日田100%で家を建てることが出来るほど多様なものづくりの職人がいます。妥協を許さない昔ながらの伝統を守り、他地域にはない良質なものを生み出しています。その優れたものづくりの技術を、もっと発信できる場所がほしかったのがまずひとつ。そして、新たに商品を開発できるプロジェクトを立ち上げて販売までしっかりすることで、作り手に正当な対価を払うことが出来る”ビジネス”のきっかけがほしかったからです。”地域=ビジネスフィールド”とならなければ、この素晴らしい伝統文化をしっかりと守っていくことができないと思いました」
Q:最初にそろえた商品は。
「自分が手がける家具をはじめ、下駄や小鹿田焼などの日田の工芸品を自分の感覚でセレクトしたり、デザインをリクエストするなどして揃えました。その後、日田工芸の漆職人や焼き物職人、縫製職人などのさまざまなジャンルの職人さんたちとの縁が広がり、オリジナルのものを企画・商品化しました」
Q:職人さんたちとの出会いは?
「普段から”ものづくり”に対してアンテナを張っている状態なので、何かしらひっかかる事があったり、閃いたりした事を話していると自然につながりますね。紹介して頂いたり、その方からまた次へと広がったり……」
Q:アイデアはどのようにして生まれるのですか。
「”ものづくり”は料理に似てますね。たくさんの素材・調味料からセレクトして自分が思い描く料理をつくる!ただ、ひとこと言で”アイデア”といっても、もととなる素材は、自分が生まれてから経験した様々な出来事の脳内ストックですから、経験が少なければ同じような料理しかつくれなくなりますよね?やはり豊富な経験や視野の広さというのは重要だと思います。さらに、料理人の感覚や腕が鈍ると、これもやはりいい料理をつくる妨げとなってしまいます。だから自分もそうした感覚を鈍らせないために、ナイフと小枝を握りしめて、いつも何か作ったりしていますよ。単純に創作意欲が湧いたからという時もありますけど(笑)。”ものづくり”に関わる人、これから関わろうとしている人は、普段からいろんなモノを見たり聞いたり触ったりして五感を豊かにしておかなければ、脳内に素材のストックができないし、それを自由に出し入れできることができなくなります。それではいいアイデアもでないし、いいものもつくれないと思います」
Q:商品化のテーマやコンセプトがあれば教えて下さい。
「商品がどんなにすばらしい素材を使用して技術を駆使して完成しても、それがとんがりすぎたものだったり実用的でなかったり、さらにコストが高ければ人が手を伸ばしてくれず、結果として自己満足にしか成りません。私の役割としては、ニュートラルなスタンスで、秀でた技術とお客様のニーズの橋渡しをして具現化することだと考えています」
Q:お客様からのアイデアで商品ができることも?
「もちろんです。ショップをやっていて本当に良かったと思うのは、お客様との会話なんですよ!以前『迷路が好き過ぎて自分で画く』というおもしろい小学生に出会い、作品を見せてもらったんですよ。その時に自分が学生の頃、『今日の迷路』と題して黒板の端に迷路を描いていた事を思い出して、話が盛り上がったんです(笑)。その会話から、木のコースターに迷路を刻んだ『迷路コースター』もうまれました。コーヒーを待つ間の暇つぶしにいいと思いません(笑)?」
Q:現在はどのような活動をされているのですか?
「日田は杉の産地なので、その杉を活かすこと・守ることを目的に、2年ほど前に 『HITA SUGIプロジェクト』を立ち上げました。杉をフィルムコーティングした『杉シート』や、布と張り合わせた『木布』などを開発したり、それを使用した家具や雑貨をつくっています。その売上から木育や森林保護活動のグループを助成しています。杉で商品を作ることによって、自然を守り、山で仕事をする人を守り、伝統と文化を残すループを固めていき、ビジネスが地域を守るというプロジェクトです」
Q:今後の目標は?
「さきほど話したような、”ものづくりの魂みたいな感覚”をもつ子どもたちが天然の木や道具に触れることができるワークショップや教室をしたいですね。つくる工程を考える想像力や形になるおもしろさ、木のぬくもりや道具の大切さを五感で感じることができ、その一連の流れが心のどこかにしっかりと記憶されると思うんです。その子どもたちが大人になった時には、きっと”ものづくり”に関わってくれるんじゃないかって期待しています。その時には、現在の伝統・文化がその時代にあった形と融合して進化させ、後世に残してくれると思います。そんな未来を繋げられるような取り組みが将来のビジネスとなり、その先にある結果が『地域貢献』だと思うので、良い循環をつくれるような活動をしていきたいですね」
お忙しい中、ありがとうございました!